消化器内科にて:
「肝硬変の○○さん、今日の具合はどうかね?」
「はあ、元気です」
「アホか。元気な人間がなぜ入院してる?」
耳鼻科にて:
症例検討会で卒後五年くらいの医局長がプレゼンテーション中、教授の鋭い質問に立ち往生。「君は学生に戻った方がよさそうだな」と肺腑をえぐる鋭い言葉。翌日医局長は外来で看護婦に当たり散らす。
僕には講師が指導係としてついてくれていた。甲状腺癌のオペをやるという。カルテを見、検査データを見て
「センセ、これ橋本病と違いますか? CEA が上がってるし、いやまあ CEA 高値は橋本病特有ではありませんけど参考程度には。で、この患者さんホンマに癌ですかね」
「CEA てなんや?ともかくこれからオペや。開けたらわかるやろ」
「あ、えらいこっちゃ。反回神経切ってしもた。癌が反回神経を巻き込んでたのでやむを得ずということにして、、、いやいやカルテを見たらばれることや。なあ君、とにかく部長(教授のこと)には黙っといてね」
産婦人科にて:
「ハゲはしつこい」という言葉があるかどうか知らないが教授、見事なハゲ茶瓶でやることも妙ちきりん、女学生に対しては言葉のセクハラやり放題。時代が少しズレてたら今頃訴訟もんでっせ。
回診で質問に答えられない学生にはつるつるの石頭で頭突きをかまし驚かせる。
女学生が身につけているペンダントを手に取り
「これはオトコに貰ったのか。なに自分で買った?嘘を言うな。君みたいな可愛らしい女学生がアクセサリーを自前で買うことはあるまい」
脱線は延々と続きもはや臨床実習どころではなく女学生が泣き出すまでおさまらない。あー、情けないよ。
精神科にて:
受け持ち患者は古典的精神分裂病の診断がついてもう十年以上病棟にいるらしい。見かけは実に堂々としており中小企業の社長風。「電波が飛んできて」とか「神の命令が、」などと口走ることもない。格別目つきが変っているわけでもない。
「わしも長いことここにいるがなぜかわからん。周りの連中、気ちがいばかりや。ほら、あいつを見て見ろ。始終うつむき加減で左目の下に左の手のひらを受け皿みたいにして固まってるだろう」
その患者に何故そんなことをしているのか尋ねてみたら「目からマヨネーズが次々出て布団を汚すので」とのこと。
なんともまあ不思議な世界であるが、気味が悪いのは一年遡るが講義にやってくる講師連中。各疾患を教えにくる講師がまさに自分の担当する病気そのものだった。
分裂病を講義した先生はよれよれのジーパンに T シャツ姿、一応白衣を着ているが黄ばんで汚いこと。頭ぼさぼさ眼はうつろ、視線は不安定で学生の方を見ない。
躁鬱病の講師は始終うきうきしていて壇上でぴょんぴょん飛び跳ね「わかりましたね?皆さん。わかりましたね?」学生は気味悪がって声も出せない。講師の表情は不機嫌な子供のそれに豹変し、ばんと机を叩き、
「わ か り ま し た ね ?!!!」
学生も驚いて椅子から飛び上がり、声を合わせて「わかりましたー」。まるで幼稚園である。
友人・知人で精神科医やってるやつの中ににこんな変なのはおらんが。