Schurr's keyer
頭の中のモヤモヤ
1998 年正月から心に粘着し続けているなにものかがあった。それはただ何となく頭に残るといった程度のものだった。1997 年末に近くのアマ無線家宅を訪問した際に見せて貰ったブラスのストレートキー。メーカーも品名も分らず、ただドイツ製・Schurr と称するもので随分高価だったらしいとのこと。記憶が不確かだがそれ以前に日本橋のショップでおそらく同じ物だろう、見かけて価格を尋ねると 3 万円だったか 5 万円だったか電鍵にそんな金は出せぬとすぐに忘れてしまった。
年が明けて貰った年賀状。草の根 BBS 関連で 10 年来、とはいっても今は賀状交換だけの仲だが、友人から届いたそれにブラス製電鍵写真が載っていた。すぐさま電子メールで尋ねたところ「数年前に個人輸入したもの」とのこと。Schurr なのかどうか文面からは分らずやがてブラスキーのことは記憶から薄れていった。
1998 Dec. 21
丸一年が経過し、年末日本橋のショップをウロウロしていたら同じショップで同じ電鍵をまた見かけた。やはり 6 万円。とても手が出ないが今は欲しい気分。最初に買った HK-702 という電鍵。カチカチと耳障りな音を出し、打っているうちにネジは緩むわ接点間隔は開いていくわ朝になるとぎちぎちにくっついてるわで不満を持つようになっていたのだ。商用ネット無線関係の会議室で Schurr の名が脳に染み込んでいたこともあり是非とも一台欲しい。ふと個人輸入が頭に浮かび、件の友人にまたメールで尋ねてみたところ賀状の電鍵はやはりそのものでありしかしそれは既に人手に渡ったこと、しかし今や使っていない別の電鍵や当時のカタログやら資料があるので送るとの嬉しい返事を受け取った。数日経たぬうちに A4 の大きな封筒に入ったカタログと電鍵幾つかが届いた。
1998 Dec. 23
開封して驚いた。ミニキーが二つ、台座のないパドルが一つ。ガッチリしていかにもドイツ製といった感じ。ライカを触るときの気分に似ている。さらに一番大きな箱を開けて仰天。ブラスのでかいパドルが入っていた。現用の Bencher JA-2 の時折レバー脱臼するに対照的に凄く頑丈。レバー間隔が少し狭いので慣れるまで時間がかかりそうだがこれはどんなにしても壊れそうにない。爺さんの形見のライカ、60 年を経過してまだしっかり動くのだ。
同梱のカタログを見ると小さなストレートキーは「MASTER KEY」「MOBIL KEY」の名が付いている。台座のないやつは「MINI PADDLE」。見て仰天したのは「PADDLE PROFI」。
1993 年頃の資料を頼りにファックスを送ってみた。ドイツの国番号は 49 だったか「001 - 49 - 30 - 345 - 02416」で繋がった。「030」の頭の「0」は除かねばならぬらしい。文面の重要部分のみ抜き出してみる
Klaus Gramowski / DL7NS
Kaiserin - Augusta - Allee 91,
D - 10589 Berlin Germany
Dear Klaus Gramowski
I'd like your newest catalog. If your catalog not free, please let me know how to send fee.
NAME : Yusuke Ezaki (JK3UAV)
ADDRESS : 5 - 1 - 3 HIGASHI-MIKUNI YODOGAWA-KU OSAKA CITY
ZIP : 532 - 0002
COUNTRY : JAPAN
FAX : 81 - 6 - *** - ****
FAX : 81 - 6 - 6 *** - **** (will be changed after 1998 Dec. 31 1700 UTC)
I'm very looking forward to a catalog of your FB products.
Sincerely,
Yusuke Ezaki 江崎 裕介
1998 Dec. 24
早速ファックスで返事があり「カタログは無料、A4 の立派なのを既にエアメールで送った」とのことだった。
1999 Jan. 07
年が明けて初出勤。職場にカタログが届いていた。 手作りのようだがカラー写真満載でこれが無料とは、、、DL7NS の交信証のおまけつき。あまりに立派なので紹介する
1999 Jan. 04
ふむふむ、「PADDLE PROFI」は「PROFI 98」になってどう変ったんか?「GOLD STAR」は車で使うのに良さそう。おや「MOBIL KEY」がないぞ。問い合わせねば。
1999 Jan. 08
「PADDLE PROFI」と「PROFI 98」との違い「MOBIL KEY」入手可否についての問合せに購入予定品目リストを付けてのファックス発信。
1999 Jan. 10
夕方返信あり。
「MOBIL KEY」は生産ラインから外れて数年になるが Mr. Schurr に頼み込んで特別に一つだけ作って貰えることになった。「PADDLE PROFI」は旧名称であり現在は「PROFI 2」と呼称する。「PROFI 98」は「PROFI 2」の 1998 年ヨーロッパ向け 50 台限定モデルであり同一品である。「PADDLE PROFI」と「PROFI 2」の違いはマイナーチェンジ的なもので基本的にはほとんど違いがないとのことであった。
ここに至って分かりかけてきたが、Schurr 氏という電鍵造りの名人がおり、DL7NS / Klaus Gramowski 氏が販売を担当しているということか。ファックスによると彼は近々 E - mail address を取得する予定とのこと。通販サイトができれば面白そうである。
さて、購入品目が決定したので Order Form に則ってファックスを送った。カタログには注文用紙に記入の上同封の封筒で送ることとあるが、最後に届いたファックスに「これこれであるからして決定したらなるべく早くファックスで知らせてくれ」とあったためエアメールは省略してしまおう。
さて、送金はお互いの郵便貯金口座間の国際振替がいいそうで、やり方が分からぬが明日の昼休みにでも職場近くの郵便局へ出かけてみよう。
1999 Jan. 11
昼休み、近所の東三国二郵便局へ出かけた。私の郵便貯金口座からドイツの個人郵便貯金口座へのドイツマルク建て振替である。まるで要領を得ず、一応用紙のみ貰うことにした。中央郵便局へでも出向くことにしよう。
1999 Jan. 13
豊中の一番大きい郵便局へ出向く。
欧州向けの郵便振替は 1 月 4 日から全てユーロ建てになったそうな。カタログには You can pay direct from your account to my account in DM. This is the best way of payment とあり、また Also. you can pay in DM with International Post Money Order direct to my home address ともあるがいずれにせよ指定されたドイツマルクでの支払いは不可能で向こうさんでユーロからマルクへ両替して貰わねばならない。因みに今朝のレートは 1 EUR = 129.99 YEN、1 DM = 66.41 YEN である。レートの変化などで万一不足分が出るようなら連絡を乞う旨ファックスを入れておこう。
先のファックスで品は 9 日間程で届くとのことだが、さて楽しみである。個人輸入盛んな時代にクレジットカードが使えないとはレトロで面白い。
郵便貯金口座同士の送金が最も安価だそうで、今回は自分の通帳と印鑑を持参し下の用紙に必要事項を記入するだけだった。International Post Money Orderとは日本円現金を小切手のようなものに替え封筒に入れて郵送することになるそうでなるほどそれは面倒である。
用紙
1999 Jan. 15
支払いはユーロ建てでも構わないそうで、16 日発送する旨ファックスが届いた。25 日あたりに品が到着するか?
1999 Jan. 23
仕事を終えて帰宅すると届いていた!
わははははは。
早速開封してみる。手元にある同じキーと比較すると細かい部分が微妙に異なっていて絶えず改良されている様子やいかにも手作りを感じさせられる。
個人輸入では勿論税関や検疫でチェックされてからのことだろうが何の知らせもないところを見ると電鍵の類は非関税品らしい。
その後何度か Klaus Gramowski 氏と連絡を取るうちに彼が「メールアドレスを取得した」とあったので紹介する。また、新製品もできているようなので興味がおありの方は是非メールを送ってみていただきたい。 Klaus 氏からは「古いカタログはサイトから削除してくれ」と言われているが、私としては彼の仕事を宣伝しているのではなくあくまで個人輸入体験記としてここに残すものである。最後に、電鍵の種類、購入方法等既に変わっているかも知れないが、関連情報を持ち合わせていないことをお断りしておく。
Klaus Gramowski / DL7NS dl7ns@t-online.de
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