天体導入に目盛環を使う場合はもちろん、望遠鏡の向きをデジタル表示する装置や自動導入装置を使っていても目的天体が写野のど真ん中に来ることは少なく、多くは試写像をプラネタリウムソフトに表示される星の並びと見比べて構図を決めることになる。構図決定は慣れれば早いがそれでも時間を食われることがある。現在の 2 倍(24 * 24 mm)程度を使いたいものだがこのクラスはまだまだ高価である。
広視野を得るためには短い焦点距離との組み合わせで我慢するほか無い。
水冷式はカメラ背面を水が循環する。安いものではバケツの水をただ循環させるだけで、氷でも混ぜない限り水温イコール室温であるなら水冷の利点を生かしていない。高価なものではバケツの代わりに水を冷やすいわば冷蔵庫を用い、水温の調節もできる。気温が 30℃であっても水温を 10℃にすればチップ温度を空冷式より 20℃低くでき、従って暗電流をより減少させることができる。
しかし、いいことばかりではない。むしろ悪いことの方が多い気さえする。
湿度の高い季節に水温を 15℃に設定すると数時間も経てばホースからカメラ接続部までびしょ濡れになる。水滴が赤道儀や床にしたたり落ちる。私のカメラは結露しやすいが、カメラについた水分がどこかから内部へ滲入するのではないかと疑っているほどである。また、ホースが意外に重いので取り回しに気を付けないとカメラ部分に変なモーメントがかかることになる。
さらに、冷却ポンプが故障した場合、カメラが壊れていなくても撮影できないし、横倒し厳禁のポンプをメーカーへ送らねばならない労力などリスクが高い。
さて、実際に観測を始めると暗い星の測光が大変難しく、精度も出ていないことがわかってきた。
フィルターをかけると露光時間が長くなる。同夜のうちに比較星野を撮らねばならない。観測途中に曇ってしまい、比較星野を撮影できなかったバンドは測光できない。フィルター毎にフラットフレームを撮らねばならない。その間温度管理に厳重を要する。等々、面倒が重なるうえに後の測光処理にも大変時間を要する。その結果が精度不足ではなにをやっているのかわからない。
私の観測地のように空気が汚く、空が明るい場所では彗星のようなぼんやりした天体はコマ外周部が夜光に埋もれるので暗めに測光される。しかもその度合いはバンドによって異なるから彗星の色指数を高精度で求めることはたいへん難しいが、多数のフレームをコンポジットすることによって対処できる。
最近では薄明の中や低空を撮影するときに赤外フィルターを多用して写りそうもない天体を写し留めることに成功している。また、夜光の影響が少ないと思われる明るい天体には時間の許す限りフィルターを用いることにしている。
現用の MaxIm DL / CCD はカナダ製で、 AP - 7p 推奨ソフトである。APOGEE 社以外の各種カメラコントロール機能も付いており、画像処理能力が高いので例えば SBIG のカメラをお持ちの方にも、或いは画像処理専用としても推薦できるものである。
因みにこのソフトは国内代理店で買うことができるが、メーカーから直接取り寄せれば国内価格の半額ほどになる。
日本に望遠鏡関係商社があるように、アメリカにも同様の販売店がある。天文雑誌 "Sky & Telescope" などの広告やインターネット検索で取扱店を探し、交渉してみれば現地価格で買える可能性があるので是非試していただきたい。
国内代理店を通すとかなり割高になるが、故障などのときアメリカまで送り返す必要が無く気楽である。私のカメラは昭和機械を通して買ったものである。他にアドサイエンス社も代理店であるからそこから買うこともできる。代理店が複数の場合、信用できる代理店を選択することである。SBIG のように国際光器一社が取り仕切っているようなケースもある。故障などへの対応は悪くないらしい。
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