No.077 <大峰>雪の稲村ヶ岳・バリゴヤの頭


1994.12.23.Fri.快晴

メンバー:平熊、こまくさ

0300 起床 大急ぎで出発の準備。

車で出発。平熊さん宅に寄り、車を乗り換えてこまくささん宅へ向かう。

南森町 I.C.から阪神高速環状線入り、香芝 I.C.で降り、R169 を南下して下市口経由で洞川へ。0630 頃到着した。日の出は 7 時頃。まだ暗いのでゆっくり準備を整える。お握りを一つ食べる。明けの明星が輝いている。

0655 稲村登山口(860m)発 非常に緩やかな登り一方の道が続く。木道が多数かけられていてときおり足が滑る。氷結しているらしい。雪が現れては消える。高度に関係があまりないのは樹林に覆われた部分に雪が積もらないせいだろう。ほとんど登りばかりの緩斜面を「こりゃ高度が稼げんぞ」などと言いつつ歩く。
0745 法力峠(1217m) 小休止。
0750 発 同じ様な道が延々と続く。やがて大日山が見え始める。太陽はその向こうから上がってくる。樹氷が後ろから陽を受けキラキラと輝いている。

0900 稲村小屋(1540m) 手前に避難小屋が開放されていた。テントなしでもこの山は通年泊まれるということだ。稲村小屋は閉鎖されていた。小屋の裏には水場がありこの寒い時期にも流れている。コップが備えてあったので少し飲む。小屋周辺の積雪は 30 - 40 センチくらい。
0915 スパッツを着けて出発。大日山の巻道はやや危険である。鎖場や梯子場があるようだが雪に埋もれて部分的にしか見えない。

0950 稲村ヶ岳(1725m) 大峰の大パノラマ、山上ヶ岳・大普賢岳・行者還岳・弥山・頂仙岳などが 180 度にひろがる。八経ヶ岳から見た弥山はただの土饅頭だが、ここからはなかなか雄大に見える。反対側(西)は大阪から和歌山へかけての低い山脈がうっすらと続き、海を挟んで陸が見える。淡路島か四国か?大阪方面には金剛山、葛城山がくっきり浮かび上がっている。

1010 発 ここから遥か南に見えるバリゴヤの頭を目指し一般ルートを外れる。
いきなりのブッシュに見舞われる。いわゆる薮というよりシャクナゲの大群落をかき分けて行かねばならない。枝は太く簡単には通してくれない。

小さなコブを越えると次には急降下が待っていた。シャクナゲの群落は少し減り笹薮が多くなってきた。一箇所 5 メーター程度の崖があり、ここを降りた時点でヤバいと判断、全員アイゼンを装着する(1100 1605m 地点)。こまくささんと平熊さんは 12 本爪。私は 10 本爪ワンタッチの筆降ろしである。
アイゼンのおかげでスリップはしなくなったが笹の根っこが絡みつく。足を引っこ抜いて前に出すのが難儀。

随分下まで降りたら次は見上げるばかりの岩の塊。(1559m ピーク)これを直登してまたすぐに急降下。どんどん下ってやがて最低鞍部に着いた。シャクナゲをかき分け、倒木をくぐり、跨ぎ、アイゼン付きの足は重い。普段は使わない筋肉を使うせいか妙なところが攣りそうになったりする。脇腹の筋肉まで攣った。

1130 ドンブリの辻(最低鞍部 1450m) 雪のないところを選んで座り込み昼食大休止。平熊さんからみかんを、こまくささんからレーズンを貰う。こまくささん持参の「チョーヤの梅酒お湯割り」が旨い。残ったお握りを食べ、ショウガあめ湯を作ってビスケット、チョコレートなども少し食べる。既にかなり参ってきており、ここから先の薮登り100 メーターはいいとしても帰りに不安を覚える。

1200 体が冷え切らないうちに出発。 緩やかな稜線とはいえ相変わらず続く倒木やシャクナゲの障害を乗り越えて進む。こまくささんと平熊さんは必ずどちらかが私の後ろに着いていて、先頭者のトレースを私が見落としたりルートを間違えそうになるとすかさず指示してくれる。シャクナゲに引っかかって難儀していたら後ろから枝を持ち上げてくれたりする。こんなルートに単独で来ていたら途中でリタイアするか日没時間切れにもなり兼ねない。ベテランのサポートがありがたく心にしみる。

崖を木の根に頼って攀じったり倒木に頭をぶつけつつ二つほどのコブを越えいよいよ最後の登りを残すのみ。僅か 100 メーターほどの標高差が大壁のように見える。先頭のこまくささんはルートを捜し、既にバテてしまって遅れる私の後ろには平熊さんが付いてルートの指示をしてくれる。

1325 バリゴヤの頭(1580m) とうとう着いた!皆で握手をかわす。「二度とここへ来ることはないやろなあ」感激している間もなく帰りの準備をしなければならない。暗くなる前に少なくとも稲村ヶ岳までは戻っておく必要がある。なんとか記念写真を撮り(写っているだろうか?)食い物を胃に詰め込んで(もはや「食べる」という表現が不適切になりつつある)往路を引き返す。

1350 出発 さほど薮のきつくない急坂をジグザグに下る。下りはまだしも登りにかかると極端にスピードが落ちる。数十メートルごとに息を整えねばならない。先頭の平熊さんは私がバテて足を放り出している間も決してどんどん先行せず、目の届くところにいてそのうえルート工作までしてくれている。こまくささんは私がバテれば一緒に付いて「稲村ヶ岳がもうそこに見えてきた。もうだいぶ来たぞ」などと励ましてくれる。

1500 ドンブリの辻(1450m) 小休止 飲み物など口に入れると眠くなってくる。「もうこれ以上動きたくない。寝てしまいたい」と思うがあいにくツェルトしか持ってきていない。夜はマイナス 10 ℃くらいまで下がる山中で耐寒訓練なぞやりたくはない。
1515 発 いよいよバテは進み、カメの歩みとなる。険しい急坂をえいやっと攀登っては休み、倒木をよっこらせと越えては休む連続である。ズボンの裾は自分のアイゼンで引っかけ哀れズタズタである。往路でヤバいと感じた崖にさしかかる。下ったときは確かにスタンスの少ない困った岩場だとしか感じなかったが、改めて見ると確かに手がかりがないし、もしここで滑って勢いがついたら 20 メーターくらい落ちてしまいそうな危険個所であった。

1640 稲村ヶ岳(1725m) ひょこっと出た縦走路は踏み固められ立派なトレースが付いていた。我々のあとからここに登頂したハイカーがかなりいたようである。日没まであと 20 分。再び皆で握手をかわし、ほんの少し余裕の出た私は残りフィルムの消費に入る。西側は墨絵のように山々のシルエットが浮かんでいる。

平熊さんは「大日山を稼いでくる」と言って先に出発した。凄い体力に驚くばかり。

1650 発 大日山の巻道が少々ヤバいのでアイゼン・ピッケルはまだ片づけない。大日山への分岐で上から降りてくる平熊さんを待つ間に谷間からますます墨絵のようになった景色を撮り、フィルムを全部消費した。
鎖場では手袋が鎖に張りつく。よほど気温が低いのだろう。

1720 稲村小屋(1540m) アイゼンを片づけヘッドランプを用意する。
1730 発 脳は既に寝ているようであるが、とにかくコケないよう滑り落ちないように気をつけつつ下る。ここまで来て怪我などしては終始サポートしてくれた二人に申訳がない。

1820 法力峠(1217m) 一休み。あー、寝てしまいたい。
1830 発 星が美しい。やがて村落の灯が見えてきた。

1915 稲村登山口(860m) 三たび皆で握手。非常にきつかったが充実した山行だった。
洞川温泉に入り近くで夕食を済ませて帰途に就いた。帰宅したのは 24 時近かった。

歩行時間 0950
休憩時間 0230
合計時間 1220
Back