| Homepage | Heavens & Optics | Hiking | Ham Radio & Others | Link | Author | Mail |

No.089 <北ア>前穂高岳から奥穂高岳

1995.09.15.Fri.雨のち晴れ

0530 上高地着 雨が降っている。持参のお握りを 3 つ食べ、水を汲むのに行列していたら遅くなってしまった。カッパ上下着用。

0630 河童橋発 緩やかな樹林帯を登っていくとやがて小屋見峠の看板があってそこから岳沢ヒュッテが見えた。雨はやみ、穂高の岩稜がいきなり目に飛び込んできて感激する。ズック靴はあっと言う間にびしょ濡れ。

0830 岳沢ヒュッテ さて、1. ここで宿泊の手続きをしておいて無用の荷物をデポし前穂高岳をピストンしようか、2. テントを張ってから同様にピストンしようか、3. 時間が早ければ(最終バス 1830)ピストンのあと帰宅してしまおうかといろいろ考えるが結局テントを担いだまま登ることにした。
0840 発 ガスは随分消え去り西穂高岳~奥穂高岳の岩稜が見渡せる。天狗の頭からコルへ下る部分はほとんど垂直に近い。西穂高岳本峰からひとつ奥穂高岳よりの同じ位の高さの山は赤茶けた草も木もないガレの塊のようで不気味である。同じようなピークが数え切れないほどある。一つ一つのアップダウンがかなり激しい。ニコン FE2 を取り出す。

【左・西穂高岳から右・奥穂高岳間の岩稜】

0940 2555m 小ピークにて一休み 展望がよい。焼岳の向こうに乗鞍岳が見え始めた。

進行方向を頸が痛くなるほど見上げれば奥穂高岳から前穂高岳までは岩の塊でどれがどのピークやらわかりにくい。コンパスで調べてみると目指す前穂高岳は考えていたのとずいぶん違う方向であった。

0945 発 このあたりから鎖場や岩稜となりアルプスらしくなってくる。回りはハイマツばかり。「雷鳥広場」と白いペンキで書かれた岩があったが雷鳥はいなかった。

1030 2775m 地点にて一休み すっかり展望もよくなり他の山もどんどん下がっていくのが気持ちいい。乗鞍の向こうに御岳が見えてきた。富士山は雲に隠れているのか見えない。大山でたにけいさんが飲んでいたゼリー飲料というのを仕入れてきたので試してみる。なかなかよいが何分液体なので 300g 弱と重いのが欠点である。ボチボチ靴が乾いてきた。

1040 発 鎖が増えてくる。
1115 紀美子平 ひょっこりと広場に出た。数名休憩している。小屋の弁当を食べている人の横に先ほど見たのと同じ鳥が... おこぼれ頂戴の模様である。

【いわひばりの昼食はハイカーの弁当】

ザックをデポして前穂高岳頂上を目指す。体が軽くなりつい足早になるがすぐに疲れるのでゆっくりペースに戻す。このあたりはガレ場でルートを示すペンキを忠実に拾わねばバックせねばならないはめになる。結構きつい登りである。

1145 前穂高岳(3090m) 頂上はかなり広い。

【前穂高岳からの展望】

荷物を全部担ぎ挙げてコンロに火を入れてメシを食っている二人組あり。「岳沢で会いませんでしたかね」と言われたのでノートを調べ、0830 に着いて 0840 に出たと言うと、その方は 0830 に出発したそうである。そういえば登り途中二人組が遥か上にちらほらと見えていた。

あまりにも天気が良いがこれをどう思いますかと訪ねたら天気予報官よろしく「この好天は西から張り出した高気圧が秋雨前線を南へ押し下げたもので高気圧が東へ抜ければ台風の影響を受けた前線が活発になってくる。明日は雨に違いない」と言う。二人組は今日のうちに北穂高岳小屋まで行き明日の天気がよければ槍ヶ岳へ、悪ければ下山すると言っていた。

実に説得力があったので行動は今日だけで済ませることに決定する。今夜は穂高岳山荘に泊まるかテントを張るかして明日西穂高岳へ向かおうとも考えていたのだ。

1200 1 本目のリバーサル 36 コマを撮り終えてフィルムを詰め替え下りにかかる。下りはペンキマークが拾いやすく、ルートを外すことはまずない。奥穂高岳へは昔は頂上から直接吊尾根を歩くことになっていたはずだが今は主に岳沢側にルートが付けられていて落石防止のため前穂高岳から直接稜線を歩くことは禁止されている。まあ、達者な人なら歩くだろうが... 先ほどの二人組もあれから会わなかったので紀美子平を経由せずに直接奥穂高を目指したのだろう。

1220 紀美子平(2910m) 休憩している登山者の数が増えている。この広場は休憩によく、ここまで来ながら高度差が 180m もあるせいか前穂高岳頂上まで登らない人も結構いるらしい。セサミサブレとゼリー飲料を腹に詰めてそろそろ出発にかかる。

1240 発 吊尾根を西へ。極端なアップダウンはないが道幅が狭く山側に岩が迫り出し下を見るとかなりの傾斜で岳沢へ向かって落ち込んでいていたりして案外恐ろしい。岩に張り付きながら通過する箇所が数箇所。時折涸沢側に回ればカールが見える。テントの数がひどく少ない。残雪もほとんどない。
最低コルが紀美子平近くであとは緩やかながら登り一方である。そういえば今日のルートは前穂高岳ピストンを除けば奥穂高岳まで登り一方その後は下り一方である。そろそろ疲れが出てきた。

1315 2985m地点で一休み 稜線を吹く風が強い。風に当たると寒く止めば暑い。カッパを来たままボタンを外したり止めたりして温度調整。
1320 発 緩斜面は延々と続く。傾斜が急になり目の前に巨大な岩の塊が見えたと思ったらそれが奥穂高岳であった。

1415 奥穂高岳(3190m) 2 年ぶりの頂上は今日も展望がいい。
ビスケットの残りとゼリー飲料を片づけたあと無線機を取り出しロッドアンテナを付けて 145.00MHz と 433.00MHz を聴いてみた。0、2、9 エリアからの声が混じり合って訳が分からない。手が凍えてきたので早々に無線機を片づけ、下山にかかる。

1440 ガレを慎重に下る。疲れているのでつい石を蹴飛ばしてしまうのだ。
1500 穂高岳山荘 日当たりが良くシュラフを干したり日向ぼっこなどをしている人がいる。山荘に入って受付付近をウロウロしているとどうやら今日は宿泊客が少ないらしく「今日は布団一枚に一名です」とか「個室が空いております」などとポン引きしきり。台風でこの連休を敬遠したハイカーが多かったのだろう。
また外に出る。ザイテングラートを登ってくる人がまだまだ多い。登りついた人は一様にふうぅ~と安心し切った様子である。

1510 下山にかかる 登ってくる人が多くて立ち止まらねばならない。十円玉を拾った。記念に持ち帰ることにする。

1640 涸沢小屋 楽しみの一つ 500 円のソフトクリームを注文する。おや、どでかい 3 エレ垂直偏波のアンテナが建っている。東を向いているようだがこれは一体何か?ラジエーターの長さは 2 メートルを越えていると思う。同じのが涸沢ヒュッテにもあった。(註:公衆電話のようです)

涸沢ヒュッテに向かう石畳の道周辺がテン場なのだが夏のシーズンを終えて充分に整地されてありテント設営に苦労はなさそう。足が痙攣を起こしかけている様子なので上高地へ下ることは止めにした。

テン場代 500 円を支払いヒュッテの売店で冷えたジュースを買ったり水筒に水を詰めたりしてウロウロしていたら「あ、落とし物!」という声が後ろの方から聴こえてきた。振り向いたが暗くて声の主が見つからぬ。とっさに自分の荷物を確認することもせずそのままテン場へ。のんびりテントを張っているときにザックの後ろにくくりつけておいたサーマレストがないことに気づく。先ほどの声はこれを教えてくれていたのだな。捜しに行くが見つからない。せっかく十円儲けたのに...サーマレストは約一万円。

歩行時間 0830
休憩時間 0140
合計時間 1010

【秋の夕暮れ】

1710 α米に熱湯を流し込み、ジフィーズ八宝菜を湯で戻して即席中華丼。α米は半分ほど残し明日の朝食にする。
またヒュッテの売店へ行って今度はホット缶コーヒーを買ってくる。今日はこれで終わり。さて、寝よう。

回りはかなり暗くなって皆寒い寒いを連発している。小屋にはストーブが入っている。私はまだ寒くないがそのうちに冷えてくるだろう。
テントに引っ込んでからありったけ重ね着してシュラフに潜り込んだ。マットがなく、朝方地面の冷気が背中に感じられたがその程度で快適だった。


1995.09.16.Sat.雨

2 時頃雨の音で目が覚めた。
0420 起床 残りα米にインスタント味噌汁を混ぜて朝食。テントを撤収する頃には雨は小降りで助かった。

0605 涸沢ヒュッテ発 石畳の道を下る。
0700 本谷橋 暑いのでカッパ上を脱ぐ。
0705 ここから下は地面が土に変わる。いやらしい水たまりなど出てきてせっかく乾いていたズック靴が徐々に湿っていく。雨足が強くなり傘を出す。

0755 横尾 梓川を渡って横尾。
0800 発 手元のアルピコグループ時刻表を見ると上高地発新島々行きバスは 1020 発である。急げば間に合いそう。

0845 徳沢 一度はここでキャンプしたい。芝が美しい。
0850 発 ひたすら水たまりを避けつつ歩くがそろそろ水分は靴を浸透して靴下まで達した模様である。

0930 明神 徳本峠への入口を過ぎたら明神。観光客が目立って多くなる。
1015 上高地バスターミナル どうやら 1020 のバスらしいのが停まっている。心配していた混雑はなさそう。

出発まであと 5 分なので急いで窓口へ向かうとハイカーが声をかけてきた。4 人でタクシー相乗りしないかとのこと。せっかくバスの時刻に間に合ったのだがこういうのもまたいいかと思って話に乗る。結局 14080 円 / 4 人で随分高くつきその割にさほど早くはなかった。

4 人のうち 2 人はパーティで、1 人は単独である。単独氏は槍沢ロッジに 2 泊して槍ヶ岳をピストンしてきた由。
2 人組は昨日前穂高岳から降りて岳沢ヒュッテに泊まったそうで、記録を突き合わせてみると吊尾根のどこかで擦れ違っていた。

昨日穂高のどこかで墜落死があったとのこと。どこだろうか?

帰宅後に新聞で知ったことだがちょうどタクシー内で居眠りしている頃西穂高岳~奥穂高岳間で 24 歳の青年がスリップして死亡している。

1150 松本駅着 2 人組は温泉に浸かりに行くということで私ともう 1 人の単独行氏だけここで降りる。

次の列車は 1205 発である!切符売り場の前の方に頼み込んで先に入れていただく。切符を買って改札を通過し大急ぎで弁当を買ってホームに降りると「しなの 10 号」が着いたところだった。危ない危ない。腹が減ってしょうがないので弁当に食らいつく。

知らぬ間に寝ていたらしく、目が覚めたら名古屋であった。新大阪行きのこだまが間もなく出るところである。実にタイミングがいい。大急ぎで自由席に。ガラガラだったので 4 人がけを対面にして占領する。乗車券 5970 円。特急券しなの(新幹線乗り継ぎ割引き)1280 円、新幹線 2370 円だった。アルピコの直行バスは 9000円であるからバスの方が随分安い。

歩行時間 0355
休憩時間 0015
合計時間 0410


| Back |