ORBITLIFE V2.0.7 ORBIT DETERMINATION
OBJECTS
12
SPAN
2008—2026
SHORTEST
1.8時間
LONGEST
21時間
SMALLEST
0.4m
METEORITES
4回収

IMMINENT IMPACTORS  ·  2008 — 2026

落ちる前に見つかった、12個。

地球の大気に飛び込む前に発見できた小惑星は、2008年10月から2026年5月までで 12個です。 1個目が 2008 TC3。それから18年で、まだこれだけしかありません。 そして、この12個の観測はすべて Minor Planet Center に残っています。 OrbitLife にはそれを直接受信する機能があるので、 あなたも、この12個を自分の手で計算できます。

§01 THE TWELVE

12個の一覧。

「猶予」は、発見されてから大気に飛び込むまでの時間です。 いちばん短いもので 1.8 時間。見つけて、軌道を決めて、落ちる場所を出すまでに 与えられた時間が、それだけしかなかったということです。

天体突入 (UTC)落ちた場所直径猶予回収された隕石
2008 TC32008-10-07 02:46スーダン北部4.1 m約20 時間Almahata Sitta
2014 AA2014-01-02 03:04大西洋中部1.6–3.9 m約21 時間
2018 LA2018-06-02 16:45ボツワナ・南アフリカ国境2.7 m約8.5 時間Motopi Pan
2019 MO2019-06-22 21:26カリブ海5.3–7.2 m約13.5 時間
2022 EB52022-03-11 21:22北極海4.2–5.7 m約2 時間
2022 WJ12022-11-19 08:26カナダ・オンタリオ州0.5–1.2 m約3.6 時間
2023 CX12023-02-13 02:59イギリス海峡0.7 m約6.7 時間Saint-Pierre-le-Viger
2024 BX12024-01-21 00:32ドイツ・ベルリン近郊0.4 m約2.7 時間Ribbeck
2024 RW12024-09-04 16:39フィリピン・ルソン島北部1.5–2.0 m約10.9 時間
2024 UQ2024-10-22 10:54東太平洋1.2–1.5 m約1.8 時間
2024 XA12024-12-03 16:14東シベリア0.6–1.6 m約10.3 時間
2026 JN42026-05-15 13:39オーストラリア北部・アラフラ海0.5–1.2 m約5.5 時間

直径はどれもメートルの単位です。いちばん小さい 2024 BX1 で 0.4 m — 机の上に載る大きさの石を、地球に当たる2.7時間前に、宇宙空間で見つけていることになります。

12個目の 2026 JN4 について

2026年5月15日、JPL SynTrack Robotic Telescope の N. Saini が発見しました (仮符号 ST26E86)。ただし突入そのものは確認が取れていません — 目撃報告も、電波・レーダー・微気圧振動の記録も上がっていない、と国際流星機構は 書いています。落ちた場所についても出典によって表現に幅があります。 「予報された」ことと「観測された」ことは別だという、そのままの例です。

§02 TRY IT

ぜひ、ご自分で計算してみてください。

このページに手順は書きません。いちばん面白いところを、先に取り上げてしまうことになるからです。 やり方は衝突の計算のページに 2008 TC3 で1本通してあります。 残りの11個は、同じ手順がそのまま使えます。

まず

観測データを集める手間は、ありません

[ファイル] → [MPC から観測データを取得] を選び、天体名の欄に 2018 LA のように打って [取得] を押すだけです。 MPC に報告された全観測をダウンロードして観測フォルダーへ保存し、そのまま読み込みます。 数秒で一覧が並びます。

ウェブサイトを探して回る必要も、テキストをコピーして貼る必要も、 書式を整える必要もありません。ここでつまずいて諦める、ということが起きません。 画面には入力例として C/2025 A12P332P2024 YR4 が出ています。上の表の符号は、 そのまま打って通ります。

つぎに

どれから始めるか

はじめの1個
2008 TC3  ·  2014 AA  ·  2018 LA猶予が長かったぶん観測の数が多く、弧も長いので、素直に収束します。まずはこのあたりで、衝突の時刻と緯度経度が出るところまでを味わってください。
手ごわい相手
2024 UQ  ·  2022 EB5  ·  2024 BX1猶予が2時間前後。観測がごく短い区間に固まっているので、[手動] を押しても残差が上下するだけ、ということが起きます。そこが[自動停止]にチェックを入れて [自動] を押す場面です(使い方の [自動] の説明)。
隕石が落ちた4個
2008 TC3  ·  2018 LA  ·  2023 CX1  ·  2024 BX1石が回収されているので、あなたが計算した落下点が、実際に石の見つかった場所と合うかまで確かめられます。2018 LA の Motopi Pan は、のちに小惑星ベスタ由来と分かった隕石です。

そして

答え合わせは、上の表で

出てきた突入時刻を、表の「突入 (UTC)」と比べてください。 衝突点の緯度経度は、地図で引いてみてください。 分の単位まで合ったときの感じは、たぶん言葉にしにくいと思います。

合わなかったときと、合ったとき

合わなかったとき。まず自分の手順を疑ってください。3点の選び方、リジェクトのしきい値、 改良が収束しきっているか。σ0 が大きいまま [衝突確率] を押していないか (衝突の計算 §04)。
合ったとき。それはすべての観測が出そろったあとに計算しているからでもあります。 発見当日の観測者たちは、いま手元にあるデータのごく一部で判断していました。 同じ数字が出たからといって、その難しさまで再現できたわけではありません。

§03 WORKED

12個目を、知ったその日に。

このページに手順は書かない、と決めました。ただ1つだけ例外を置きます。 12個目の 2026 JN4 は、このページを作っている最中に「そんなものがあったのか」と 知った天体です。その日のうちに計算してみた記録を、そのまま残しておきます。 かかったのは、数十分です。

1

観測は6点、弧は2時間44分

[MPC から観測データを取得] に 2026 JN4 と打つと、 並んだのは 6点だけでした。2026年5月15.339149 から 15.453109 まで、 2時間44分。観測所は I41・U68・U74 の3か所。これが全部です。

この弧では [手動] を押しても残差が上下するばかりで収束しません。 [自動停止]にチェックを入れて [自動]使い方で「観測数が極めて少ないとき」として説明している、 まさにその場面でした。平均残差 0.569239 秒角。

2026 JN4 の軌道改良が収束した OrbitLife の画面。観測一覧は2026年5月15日の6行だけ。平均残差 0.569239 秒角、a=1.4952607、e=0.4277108、Incl=13.04553、アポロ群 TJ=4.42。改良の[自動]と[自動停止]が赤枠で囲まれ、右の最接近欄の 地球 2026/5/15.473 0.00080 AU 120233Km も赤枠
右の[最接近]欄は 0.00080 AU(120,233 km)当たらないように見えます。 これは元期(4月30.0日)までしか積分していない段階の粗い値で、 このあと精密に積み直すと答えが変わります。

2

元期を5月20.0日へ移し、[衝突確率] を押す

[系統誤差を見込む]にチェックを入れました。観測が6点、しかも2時間44分に 固まっているので、残差に現れない誤差のほうが効く条件です。 σ0 0.805 秒角に系統誤差 0.5 秒角を見込んで 0.948 秒角として計算されています。

2026 JN4 の衝突確率の計算結果。クローン数300(有効300、不成立0)、偏り1.2倍、σ0 0.805秒角に系統誤差0.5秒角を見込んで0.948秒角、衝突確率100.00%(300/300)、衝突時刻 13:38:59.693〜13:40:05.793 UTC。【地球衝突を検出】2026/5/15 13:40 UTC、衝突点の緯度 -14.732度、経度 +129.267度、突入速度 17.09 Km/s、検出方式 閾値通過(サンプル間隔 26.4 秒)。右の最接近欄は 地球 0.00004 AU 6178Km
衝突確率 100.00%(300/300)。[最接近]も 0.00080 AU から 0.00004 AU(6178 km)へ変わりました。粗い見積もりと精密な結果の差が 12万km あったのは、15日ぶんを粗い刻みで外挿していたからです。

2008 TC3 と並べると、観測の弧の長さが、そのまま答えの幅に出ているのが分かります。

2008 TC32026 JN4
観測の弧約1日2時間44分(6点)
平均残差1.557716″0.569239″
1/a の誤差±0.0000010943±0.0000408417
共分散の偏り3.0 倍1.2 倍
検出サンプル間隔10.5 秒26.4 秒
300本の衝突時刻の幅0.414 秒66.1 秒
衝突確率100.00 %100.00 %

時刻の幅は 160倍に広がりました。それでも「当たるかどうか」は300本とも一致しています。 短い弧で不確かになるのは、まずいつ・どこにのほうだ、ということです。

2026 JN4 の地球儀。オーストラリア北部の海岸に Impact 点があり、2026/5/15 13:40 UTC と表示されている。橙色のクローンの束が北東から降りてきている。左上に地球衝突確率 100.00% (300/300)
衝突点は 南緯 14.732°・東経 129.267° — オーストラリア北部、ティモール海に面した海岸です。 発表されている落下地点は出典によって表現に幅があり、これはそのうちの1つの答えです。

3

光度曲線で、大きさも出してみる

小惑星ですから、[天体の種類] を[小惑星]にします。観測が少ないので G = 0.15 に固定(画面にも「観測が少ないときは平均的なG=0.15を推奨」と出ます)。 H = 33.09、RMS 0.172。

2026 JN4 の光度曲線。小惑星モードで H=33.09、G=0.15 固定、RMS 0.172。観測点は左端に6点だけ縦に並んでいる。右下に「直径 0.64 - 1.44 m (p=0.25-0.05と仮定)」と表示され、下端に光度式 M = 33.09 - 2.5 log10[(1-0.15)Φ1(α) + 0.15Φ2(α)] が出ている
右下に 直径 0.64 − 1.44 m(反射率 p = 0.25〜0.05 を仮定)。 公表されている 0.5〜1.2 m と重なります。 6点の観測から、石ころ1個の大きさまでが出ました。

この表示は、このページを作っている途中で直りました

直径は長らく km 単位で出していたので、最初はここが 「0.00 − 0.00 km」と 表示されていました。メートル級の天体では桁が足りず、読めなかったのです。 1 km を下回るときは m で出すように直したのが、上の画面です。 — 落ちてくる小惑星は、たいていメートルの単位ですから。

4

答え合わせ

OrbitLife の計算公表されている値
突入時刻 (UTC)2026/5/15 13:402026/5/15 13:39
直径0.64 − 1.44 m0.5 − 1.2 m
場所−14.732°, +129.267°オーストラリア北部・アラフラ海
それでも

予報が当たったのに、誰も見ていない

突入点の現地時刻は 22時17分ごろ。この日の月齢は 28.4 日で、 新月の1.2日前 — 月明かりのない、暗い空の夜です。条件は悪くありません。 それでも、目撃報告も、電波・レーダー・微気圧振動の記録も上がっていません。
突入点の真下は、オーストラリア北部の人のほとんどいない海岸でした。 そして直径 0.64〜1.44 m、突入速度 17.09 km/s から見積もる突入のエネルギーは 0.015〜0.163 kt(岩石を仮定)。検出網に確実に届く大きさではありません。
「予報が当たった」ことと「観測された」ことは別です。 12個目は、そういう1個でした。

— そして、ここまでに必要だったのは、天体名を打つことと、[自動] を何回か押すことだけです。 次の1個が報じられたときは、ぜひご自分で。

§04 WHY SO FEW

18年で12個、という数について。

少なく見えるかもしれません。地球には毎年もっとたくさんの石が落ちています。 12個というのは「落ちた数」ではなく、落ちる前に、宇宙空間にいるうちに見つけられた数です。

直径 1 メートルの石は、地球から 100 万km 離れていれば 20 等より暗い天体です。 それを掃天観測が拾い、符号が付き、追加の観測が集まり、軌道が決まり、 「地球に当たる」と分かるまでを数時間でやり切る必要があります。 12個という数字は、その難しさの目盛りだと思ってください。

そしてこの数は、これから増えます。表を見ると、2008年から2018年までの10年で3個、 2022年から2026年までの4年で8個。掃天観測の網が細かくなった分だけ、増えています。 次の1個が報じられたとき、その観測はやはり MPC に載ります。 そのときは、報道と同じ日にご自分で計算してみてください。

§05 NEXT

となりの画面。

§06 SOURCES

一覧の出典。

§03 の軌道要素・残差・衝突時刻・衝突点・突入速度・衝突確率・H・直径は、 すべて画面のとおり OrbitLife で計算した値です(直径は反射率 p = 0.25〜0.05 を仮定した幅)。 それ以外 — §01 の表の突入日時・場所・直径・猶予・隕石の名前 — は、 すべて次によります。

THE LIST
Asteroid impact prediction (Wikipedia)落下前に発見された小惑星の一覧表。突入日時 (UTC)・落下地点・推定直径・猶予時間・隕石の回収の有無は、英語版のこの表によります。日本語版に「地球への衝突が予測された後に地球に衝突した小惑星の一覧」がありますが、収録している数が英語版と一致しないことがあります。ja.wikipedia.org  ·  日本語版  ·  en.wikipedia.org  ·  英語版
2026 JN4
2026 JN4: 12th asteroid discovered before atmospheric entry国際流星機構 (IMO)。発見者・望遠鏡・仮符号と、突入の確認が取れていないこと。imo.net
METEORITES
回収された隕石の名前Almahata Sitta(2008 TC3)、Motopi Pan(2018 LA、ベスタ由来とされる)、Saint-Pierre-le-Viger(2023 CX1)、Ribbeck(2024 BX1)。SETI Institute(Motopi Pan)  ·  Bischoff ほか, Meteoritics & Planetary Science (2023)(Saint-Pierre-le-Viger)
OBSERVATIONS
Minor Planet Center12個すべての観測が公開されています。OrbitLife の [MPC から観測データを取得] が読みにいく先です。minorplanetcenter.net