芸西天文台で2010年9月3日に発見し、10月5日まで追跡し続けた小惑星の軌道が確定し、ついに321821番として番号登録されました。これで私がかかわったものとしては2個目の命名提案件がいただけました。大変うれしいです。
下に発見画像を掲載します。
小惑星(321821)2010 RT46の発見画像
実はこの日、超新星を捜索しようとして、その時ちょうど南中していたやぎ座にある銀河NGC 6907を写したのです。超新星は無かったのですが、ついでに移動天体が写ってないかチェックしてみると、端っこに18.3等の明るい移動天体が写っていたのです。調査したところ、まだ符号が付いてない移動天体だったので、追跡することにしました。
1夜のわずか2枚の測定しかないので、とりあえずいくつかのバイサラ軌道を計算しました。
次の9月4日は幸運にも晴れてくれたので、第1候補の軌道上を3分露出で3枚撮ってみたところしっかり写っていて2夜目の追跡に成功しました。この2夜目が重要なのです。1夜のわずか2画像(観測期間わずか5分)で軌道計算した場合、観測できない日が10日も続いたら追跡は困難です。
次に観測できたのは9月8日でした。4日も経過していたので第1候補の軌道上には見つからず、ドームの中で3日と4日の測定データの組み合わせをいろいろ変えながらバイサラ軌道を計算し、どうにか3夜目の追跡に成功しました。この3日分の追跡で仮符号2010
RT46がもらえました。これで一安心です。
9日も月の影響のない夜で、4観測に成功しました。これで観測期間が6日に延びたし光度も明るいこともあって、一旦追跡を中断して、次の新月ころ再び追跡することにしました。
最後は10月5日に追跡しました。これも5枚すべてに写っており追跡期間が1ヶ月をこし、軌道の精度がある程度良くなったことと、光度が19.5等まで暗くなったので追跡を止めました。
あとは巨大天文台のサーベイによって検出され、観測期間が延びるはずです。期待通り、10月12日にはMt. Lemmon Surveyによって観測され、11月8日にはKitt
Peak-Spacewatchによって観測されました。
この後が心配だったのですが、小惑星センターにてこれらの観測から過去に向かって観測データが調査され、2005年10月3日にCatalina Sky
Surveyがすでに発見していたことが判明しました。さらに、2005年9月1日にもPalomar Mountain/NEATの観測が見つかり、2004年1月1日にもPalomar
Mountain/NEATが写していたことが判明しました。
しかし、すべて1夜単独の観測しか報告されておらず、これらのデータだけでは同定が不可能だったことと、芸西天文台が1ヶ月以上も追跡したことによって、過去に蓄積された観測との連結ができたわけなので、芸西天文台が発見者として扱われました。
この小惑星の追跡を完了したわずか2カ月後に、芸西チームの軌道計算を担当した村岡健治さんが突然亡くなりました。共に喜びあえないのが残念でなりません。
村岡さんだったらこの小惑星に何と言う名前を付けるかな?
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.
2 comments for “2個目の小惑星発見が認められました”