知り合いの天体写真家さんが、みずがめ座にある惑星状星雲NGC 7293を高知市のど真ん中の明るい空から撮っていたので、私も望遠鏡を向けてみました。この星雲は大きいので70cm F7 (焦点距離4900㎜)の望遠鏡でははみ出てしまうと思っていたので、これまで撮ったことがありませんでした。
すごく淡い星雲なのでまず10分露出で撮ってみました。
冷却CCDカメラのCCDサイズが36mm x 36mmと大きいのでどうにか収まりました。
しかし、望遠鏡がF7と非常に暗いので、星雲が淡いです。おまけに背景に街明かりがかぶっていたり、なにかの影ができていたりで人に見せられる画像ではありません。
この時点で知り合いの天体写真家さんがTwitterに出した画像を見ると真っ黒で滑らかな背景に、星雲が露出オーバーかと思うくらい明るく写っていました。高知市のど真ん中からですよ。しかもビール飲みながらベランダで撮ってたんです。その写りの差に落ち込んでしまいました。
この背景の汚い画像、どうにかしてきれいにしなければと考えているうちに、そうだ、ドームフラットを撮って、どれだけ効果があるのか試してみようと思いました。
撮ったままのNGC 7293
芸西の望遠鏡は経緯台式です。フラット画像を撮るのは赤道儀ほど楽ちんじゃないのです。望遠鏡の向き(X軸)が変わると視野回転装置の角度が変わるので、またフラット画像を撮りなおさないといけないのです。しかもフラット撮影用の設備は備わっていません。ということでフラット画像は今まで撮ったことがなかったのです。
とりあえずなので、むちゃくちゃな撮り方ではありますが、制御用コンピュータのLEDの明かりを光源に撮ろうとしました。つまり、斜め下からドームの壁に照らされた光をフラット画像にしようと言うのです。まあ、やってみましょうという感じです。
望遠鏡とドームの連動機能をオフにして、リモコンボタンでドームだけを90度回転させて、1分間露出してみました。
それが下の画像です。
光源が斜め下からあたっているので下の部分が明るくなってしまいました(その時はそう思っていました)。でも上の黒い影みたいな部分と中央のほこりによる模様はしっかり反映されているので、これらは補正できるだろうと期待しました。
ドームフラット画像
さて、フラット補正してみました。
なんとなんと、驚くことに背景が完璧にフラットになりました。
しかも、下の方に向かって明るくかぶっていた街明かりまで消えてしまいました。はて?
この時点で疑問が出ました。白い雲に向けてフラット撮影したのならわかるけど、ドームフラットなのになぜ街明かりが消えてしまうのか?帰りの車を運転しながらあ~でもない、こ~でもないと考え続けました。
フラット補正した画像
下の画面を見ながら考えてみました。
左が元画像、中央がドームフラット画像、右がフラット補正した画像です。
ドームフラット画像を見ると、元画像と同じように左下に向けて明るくなっています。光源とドームの角度の関係で偶然街明かりと同じ方向が明るく写ってしまったのか?いや、そんなみごとな偶然は起きないはず。
Twitterでその天体写真家さんといろいろ意見交換しましたが、「それは街明かりじゃなく、光学的特性なのでは」と言われ、今度は別の方向に向けて撮ってみることにしました。
次の日に西の方にあった星団に向けて撮ってみました。こちらには高知市の強い明りがあり、前日の条件とは全く異なります。同じようにドームフラットを撮像し、フラット補正してみると、見事にフラットな背景になりました。そして、微かなかぶりが残りました。これが本来の街明りか、ドームフラットの不適切な光源による影響なのでしょう。
ということで、長年街明かりによるかぶりだと思っていた明かりは光学的特性によるものでした。明るい部分が本来の光で、暗くなっている部分は何かの影になって光が届いてない部分なのでしょう。
フラット画像は本来もっと光源の位置やフラット板の色までも調整して、高品質な画像を撮るべきなのですが、こんないいかげんこの上ない方法でもかなりの効果があることがわかりました。
下の画像は左がフラット補正せず、画像処理ソフトでどうにかしようと試みたものです。背景の影が補正しきれませんでした。右がフラット補正して、明るさの調整を簡単に行ったものです。ちょっとざらざらな画像になりましたが、これはフラット画像のレベルが高すぎたのかもしれません。今後試行錯誤してみます。
今回のいいかげんなフラット撮影、大きな収穫でした。考える前にやってみることも大切ですね。
きっかけをいただいた天体写真家さんに感謝です。またその後の検討、アドバイスありがとうございました。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.
2 comments for “強烈なかぶりは街明かりじゃなかった”