板垣さんが発見したいるか座の新星が少し暗くなったというので芸西天文台の70cm反射望遠鏡に冷却CCDカメラでも光度測定ができるかもしれないと思って写してみました。
6等級と極めて明るいので、冷却CCDカメラをビニングしないモードで、最短露出時間の0.12秒で写しても飽和(オーバーフロー)するかどうかぎりぎりだろうと思いました。そこで、0.12秒露出を101枚撮影して、その中から大気の乱れにより写りの悪いものを除いた74枚をコンポジット(重ね合わせ合成)しました。
そのコンポジット画像からステライメージの光度測定ツールで測定してみました。測定に使った星表は、光度に関して精度の良いTycho-2カタログを使い、できるだけ白色の恒星の光度を用いて測定しました。
測定結果は5.7等となりました。
『いるか座新星はいるかな?みんなで光度曲線をつくろうキャンペーン』サイトに掲載されている光度に比べると少し明るい値が出ました。
このサイトに掲載されている光度は精度良く測定されたV光度なのでしょう(ふつうはそうです)。私の観測したものはSBIG STX-16803Eという冷却CCDカメラでなにもフィルターを使わずに撮った画像から測定したので、眼視にくらべて赤い波長や青い波長に感度が高いために、明るい数値が出たものだと思います。
いるか座の新星
NOVA DELPHINI 2013 = PNV J20233073+2046041
2013年8月27日(JST)撮影
これだけ明るいと観測や測定にすごく時間がかかります。
え??逆だろうって。
そうですよねえ。普通そう思いますよねえ。
芸西天文台の70cm反射望遠鏡に冷却CCDカメラで観測した場合、14等~18等がいちばん手間がかからないのです(もちろん高度によりますが)。30秒露出から3分露出を1枚撮ればいいので、撮影時間も測定の労力も少ないのです。19等~20等になると15分から30分の撮影時間が必要で、21等級になると2時間から4時間の撮影時間が必要になります。
では、明るければもっと楽だろうと思われるかも知れませんが、明るすぎると短時間露出で撮らないと対象の星が飽和(まっしろ)になって正しい光度が測定できません。短時間露出で撮ったとしても、こんどは周辺の星が暗くて写らないことになって、これでは比較星が無くなるので測定できないのです。ではどうやって撮影し、測定するのかというと、対象の星が飽和しないように超短時間露出で撮ります。ところが、これだと大気の乱れによって星像が変形したりピント位置がずれたり位置が変化します。そこで総露出時間が10秒とか30秒とかになるまで、数十枚とか数百枚撮りコンポジット(合成)することで、大気の乱れによる影響を平均化します。そして比較星用には1~2分露出した画像を別に撮ります。そして、あ~やって、こ~やって測定して、計算して…..。長くなるので書きません。
とにかく、明るい星の光度測定は大変な時間がかかります。
8月20日に観測した時には4等級だったかで明るすぎて、あまりにも手間暇かかるので途中で挫折してしまいました。
ということで、明るいうちは他のベテラン変光星観測者の方たちにお任せして、私は暗くなってから再び出動することにします。でもそのころにはだれも関心を持たなくなってしまっている可能性が大ですが….。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.
3 comments for “いるか座新星の光度を測定してみました”