いきなり真っ赤な画像が表示されて気持ち悪いかもしれませんので、先に説明しますと、これは私が冷却CCDカメラで天体を撮像している最中のノートパソコンの画面をデジカメで撮ったものです。なぜ真っ赤なのかと言いますと、ノートPCの画面が明るいと目が明るいほうに順応してしまい、星が良く見えないからです。できるだけ暗く設定するのですが、それでも明るすぎるので苦肉の策として赤くしているんです。医学的・光学的にはこんな安易な方法は最適とはいえないようですが、これでもかなり暗くなります。
前置きが長くなりましたが、今回は赤が話題ではなくて、『真っ黒は本当に真っ黒か』というお話です。
上の赤い画像の左上にまっ黒い長方形の部分があります。これが撮像直後の天体画像です。右隅に大きな星が、その少し左に暗い星が写っているだけでほかにはなにも天体らしきものは写っていません。
「直径20cmの鏡で焦点距離が1300mmもある反射望遠鏡に何十万円もする冷却CCDカメラを付けて撮像しても、この程度しか写らないんですか?」って言われてしまいそうですねえ。
はっきり言って、その通りです(笑)。
我々天文家はこの真っ黒な画像を宝物のようにして持ち帰るんです。
下の画像はみごとな『天体画像』です!って言っても一般の人は信じてくれないでしょうね(笑)。嘘じゃないことを試してもらうためにホームページで一般的なJPGフォーマットではなく、16ビットのPNGフォーマットで掲載してあります。多くの人の画面には正しく表示されていると思います。画像は真っ黒の横長の長方形で、近くでよく見るとディスプレイのほこりのような白い点が5個くらい見えると思います。それで正常に表示されています。
天体画像の原画(真っ黒な画像です)
16ビットのPNGフォーマット(ダウンロード可能)
この真っ黒な画像の中に隠されている信号を思いっきり増幅すると下の画像になります。星雲の濃淡も良く出ていますし、17等級の暗い星まで写っています。上の真っ黒な中にはこれだけ多くの情報が記録されていたんです。
日常生活の間隔では肉眼で見えない暗いところには光が無くて、どんなにがんばってもなにも見えないように感じますが、実はたくさんの光が存在するんですねえ。
上の画像にはオリジナルのままの情報が含まれているので、右クリックしてダウンロードし、好みの画像処理ソフトで処理してみてください。ちゃんと下のような画像が得られますから。
画像処理後のもの
おうし座にあるM1星雲(超新星爆発の残骸)
このような芸当は天体専用の冷却CCDカメラだからできることでもないのです。市販の一眼デジカメでも可能です。試しに真っ暗な風景を撮ってみて、画像処理ソフトで明暗の調整をするだけであら不思議、まるで昼間撮ったかのような画像が得られます。ただし、保存するときに高圧縮のJPGフォーマットにすると圧縮処理の過程で階調や色情報が失われるので、最高画質モードに設定し、パソコン内部でも最高画質のまま画像処理し保存することが必要です。
では、ポータブルの安価なデジカメ(2008年1月現在)ではどうかというと、残念ながら濃淡の階調が少ないので、暗いものをいくら画像処理しても白っぽくなるだけです。
高階調のデジカメを三脚に乗せて、シャッターを5分から30分くらい開けて星のある夜景など撮ってみて下さい。少しだけ画像処理すると、肉眼では見えなかった星が浮かび上がり美しい星景写真が出来上がります。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.