準惑星候補天体ヴァルナによる恒星食を大型望遠鏡で観測したらどうかという提案がメールで届きました。
つまり、恒星の手前をヴァルナという太陽系の移動天体(準惑星候補天体/小惑星)が横切って、その瞬間恒星が暗くなるのでその時刻を正確に求めましょうというわけです。
この情報は早いうちから、いくつかのウェッブサイトで広報されていましたので、興味を持っていました。
詳細はせんだい宇宙館のウェッブサイトをご覧ください。
この観測に成功すると天体の形状や大きさが判明します。
なぜ食の観測で天体の形状がわかるのかと言うと、いろいろな地点で同時に観測し、観測地点、食の開始時刻、食の終了時刻を考慮した図を書くことで形状が浮かび上がってくる手法があるのです。
どのような図かは星ナビ.COMの小惑星による恒星食を観測しようのウェッブサイトをご覧ください。
そのヴァルナという名前の準惑星候補天体ですが、下の軌道図のとおり、海王星よりずっと遠くにあり、冥王星の軌道と交差します。赤色がヴァルナの軌道です。ついでに、火星や地球はどこかというと、良く見ると木星軌道の内側にぐちゃぐちゃとつぶれたような丸や文字があると思いますが、その中に水星、金星、地球、火星が収まっています。中心は太陽です。ヴァルナの太陽からの距離は、約43天文単位。地球と太陽との距離の43倍になります。天文単位で言われても実感がわかないという人のためにキロメートルで言うと、64億キロメートルです。どちらも実感がわかないよという声が聞こえてきそうですね。
2011年2月10日の惑星とヴァルナの位置
次に、ヴァルナが夜空のどの位置に見えるのかを調べました。
下の星図は星座早見盤のように書かれています。中央が天頂になります。オレンジ色のマークがヴァルナの位置で、恒星食がおきる時刻にはちょうど天頂付近のふたご座にあることがわかります。月は少し西の方にあり、そんなに邪魔にはならない感じです。非常に観測に適した条件です。
ヴァルナの位置
ここまで調べて芸西天文台に走りました。
小惑星による恒星食というと、ビデオカメラで撮影しておいて、食がおきた時間を後から正確に調べるという手法が行われているので、まずはビデオカメラでテストしてみようと思っていました。しかし、良く調べると対象の恒星の明るさが15.8等ということなので、これはビデオカメラには写らないと思い、デジカメでやってみました。15.8等というと、芸西天文台の70cm反射望遠鏡をもってしても、目で覗いたのでは全く見えません。目で見えないものがビデオカメラに写るはずがないと判断したのです。
短時間露出を30分くらい繰り返し撮影しないといけないので、冷却CCDカメラよりデジカメの方が楽かなと思いNikon D700をISO 3200にセットし、1秒露出、2秒露出、10秒露出、30秒露出と撮ってみました。
下の画像は30秒露出の画像を位置測定用ソフト「Astrometrica」で探し出したところです。太い矢印の先にある白い点がその恒星です。
Astrometricaで食の起きる恒星を探し出したところ
つまり、2月10日の21時37分の前後10分程度、この恒星をできるだけ短時間露出で連続撮影して、フッと暗くなり始めた時刻と元に戻った時刻をできるだけ正確に求めるわけです。
Nikon D700 / ISO 3200 30秒露出によるカラー画像
芸西天文台 70cm F7反射望遠鏡
しかし、30秒露出では時刻の誤差が30秒生じてしまうので、もっと短時間で写す必要があります。そこで、1秒、2秒、10秒の各画像を調べたのですが、まったく写っていませんでした。かなり高感度なカメラが必要なのだということがわかりました。
冷却CCDカメラならもう少し高感度なのでやはり、本番は冷却CCDでやらなければならないと思いました。
これで、準備完了です。
さて、2月10日がやってきました。
しかし、天気予報は「雨で夜からは雪に変わるでしょう。山間部では20cmの積雪で、平野部でも5cm…..」
え~~~~~っ!
この何十日もまともに雨が降らなかったのに、こんな大事な日に限って雨が降るのか~~~。
っと叫んでも気象が変わるわけはなく、天気予報がはずれることを祈りましたが、最近の天気予報はかなり優秀で、しっかり当たってしまいました。
全国的に曇り、雨、雪だったみたいですね。
残念でした。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.