3月26日0時36分、明日(今日)も仕事があるので、そろそろ片付けて帰ろうかと思っていた時に、佐藤英貴氏がcomet-obs ML(彗星観測者メーリングリスト)に投稿したメールが届きました。
現在NEOCPに掲載されているTF85899は特異な天体と思われます。
形状は、貧弱な頭部と、10’に及ぶ直線状の尾をもち、初期軌道はメインベルト小惑星のものです。
P/2010 A2とよく似た姿なのですが、こちらのほうが明確な集光部があり、幾分測定はしやすいです。
軌道決定のための位置観測と、継続的な大望遠鏡による物理観測が望まれる天体と思います。
こんなメールが届いたのに、帰るわけにはいきません。大急ぎでNEOCPのウェッブサイトに接続し、観測データを受信し、軌道を計算しました。観測期間が非常に短いのでなかなか軌道が計算できません。まあ、こんなものかなという軌道を望遠鏡制御用コンピュータに入力して10分露出で撮ってみました。一見すると怪しい姿は何も写っていません。そんなに暗いのかなあなんて思いながら、画像処理をしながら探すと、ありました。中央よりかなり左下に引っかき傷のよう像が。さらに1枚撮ってみました。この2枚をブリンクさせてみると北西(右上)に移動しています。しかし、望遠鏡はちがった方向に追尾しています。
計算した軌道の精度が悪いのかもしれないと思い、佐藤氏から送られてきたデータを含めて、さらに時間をかけて軌道計算しました。
新しく求めた軌道要素を入力して追尾させると、良好に追尾できました。
すでにこの時、西に少し傾いて、写りが悪くなっていましたが、可能な限り写し続けました。その追尾が良好な4枚を彗星の移動にあわせてコンポジット(重ね合わせ)したのが、下の画像です(大幅にトリミングしています)。
彗星の核付近の強拡大
多くの彗星観測者は、この細長い姿を見た瞬間に思い出すのではないでしょうか。
そうです。小惑星同士が衝突して彗星状に見られた P/2010 A2 (LINEAR)です。
P/2010 A2 (LINEAR)
この2つの彗星の見た目はほんとうに良く似ています。今後どのように変化していくのか興味深いです。
非常に暗いのですが、写らなくなるまで追跡観測したいと思っています。またこのブログで報告しますのでお楽しみに。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.