2月3日(日曜日)の朝『NEOCPに彗星状の天体が掲載されています。』というメールが飛び込んできました。確認すると『XM08AA [2008 Feb.
02.6 UT. R.A. = 23 11.5, Decl. = +62 11, V = 17.0] Updated Feb. 2.93 UT
[1nighter]』という、日本時間で3日に日が変わって間もない時間に撮像された画像から検出された未確認の移動天体でした。早くもその画像がウェッブページで公開されていて、間違いなく彗星とわかるものでした。
17等級だと私の機材でもぎりぎり写る明るさです。精密位置データがまだ公開されていなかったのですが、メールで届いた概算の位置情報を元に探してみようと思って準備していました。外出先から帰ってくると13時32分に国際天文学連合から『IAUC
8915: C/2008 C1 [29577-2008/12-S1]』というメールが届いていました。COMET C/2008 C1 (CHEN-GAO)は今朝入ってきたXM08AAだということは直感でわかりました。彗星名はチン・ガオ彗星と読むのでしょうか?
今回は自分で軌道計算してみました。まだ観測期間が24時間に足りないので一般軌道はまともに計算できませんでした。そこで、離心率を1.0に仮定した暫定放物線軌道はすぐに計算できたのでとりあえずこれで追跡することにしました。彗星の位置は北の空のケフェウス座です。私の観測地からは高知市の明かりと土佐市の明かりの両方が合わさってかなり明るい位置になります。17等級だったら写らないかもしれないと思いましたが、発見者は200mmの望遠レンズにデジカメで撮った画像から発見しているのです。もしかしたら明るいのではないかと期待して出かけることにしました。
C/2008 C1 (Chen-Gao)
2008年2月3日19時30分頃~20時40分頃
上の画像の中央から左(東)方向に移動している拡散した天体が今回発見された彗星です。
決して明るくは無いのですが、ぼ~っとコマが写っているので、全光度を測定すれば結構明るいのかもしれないと思いながら1時間以上かけて10枚撮像しました。途中雲が出てきたので淡くなったり撮影を休んだりしたので綺麗なアニメーション画像にはなっていません。
これらの画像から彗星の精密位置を測定し国際天文学連合の機関である小惑星センターに送りました。この報告は早速今朝発行のMPEC 2008-C21で公表されました。各行の右端の3文字が国際天文台コードになっているのですが、その中のD70というのが私のことです。少し下へスクロールするとObserver details:ってところにちゃんと私の名前が出ているでしょ。自分の観測データが掲載されたMPECを見るのって結構楽しみだったりするんですよ(笑)。
彗星や小惑星はこのように移動するのが特徴です。
現在の地球からの距離は約1.4AU=2億1千万キロメートルで、光の速度で11分40秒程度の位置にあります。ちなみに、周囲に写っている星の多くは50光年より遠いものと思います。つまり、彗星より少なくとも3万倍遠い位置にあるんですよ。さらに良く調べると、極めて小さな銀河も写っています。これらはおそらく数千万光年とか、1億光年とか、物によってはさらに遠くにあります。
たった1枚の画像に数千万年前の姿や50年前の姿、11分前の姿を同時に写しているのです。「この宇宙の姿はいったいいつの姿を見ているのだろう」なんてあまり深く考えていると頭が混乱してくるので注意してください。
まあ、私などはこのように時代の入り混じった光をいっぺんに撮像してその中から位置を測定したり、新天体がないか探したり、明るさが変わってないか調べたり、形が変わってないか調べたり、怪しいものは写ってないか調べたりしているわけです。
宇宙にはいろんなものがあり、それぞれが何らかの変化をともなっているので、調べれば調べるほど興味が沸いてきます。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.