台風4号が南海上に近づいて荒れ模様の中、芸西天文台(芸西天文学習館)に行きました。
天文ドームは入り口にひさしが無いので中に入るときにびしょぬれになります。傘をたたんで、服に付いた水滴を払っていたら、後ろから「こんにちは」という聞きなれぬ声が。そこには門田健一さんが明るい蛍光灯逆光の中に立っていました。ついに門田さんとの対面です。これまでは電話で1度話をしただけで、会ったことは無かったのです。
門田さんは世界有数の彗星観測者で、埼玉県上尾市のような明るい空の下でも19等級の彗星を観測し、観測数に関しては個人ではぶっちぎりの世界最多報告数を誇っています。
その門田さんが休暇をとり、故郷の高知市に帰ってきているのです。そこで門田さん、村岡健治さん、関勉さん、そして私の4人で観測しながら、まだ調整中の70cm望遠鏡に関してアドバイスをいただこうということになっていたのです。
経験豊富な観測者は一瞬見ただけで多くのことがわかるものですね。挨拶もそこそこに、機関銃のような早い口調で多くのアドバイスを頂きました。メモを取っている暇は無かったので集中して聞き、帰ってきてから忘れないうちにメモを作成しました。
台風4号が近づく空
その後雨が一層強くドームをたたく中、4人は床に座っておにぎりを食べながら、先ごろ広島で開かれていた彗星会議での話しや、マックノート氏のしられざる話を聞きました。門田さんの口からは驚くような言葉が次々に出てきて尽きることがありません。やはり観測にしても、情報収集にしても限界に挑戦し続けている人が自ら体験した話は説得力があります。
帰り際にふと望遠鏡を見上げるといつの間にか扇風機が4つ四隅に付いていました。これはテスト撮影しているときに望遠鏡内部の空気の乱れが画像にかなり悪影響をしていることがわかったため、メーカーに扇風機を付けてくれるようお願いをしていたものです。
扇風機が付いた70cm反射望遠鏡
つい先般、メーカーの技術者が来て2日間徹夜で作業をしてくれたのだとか。
中央の小さな黒くて丸い部分が扇風機です。これで望遠鏡内部の空気を吸い出すことで外部との温度変化をなくし、空気の乱れによる星の揺らぎを少なくすることができます。
そのほかにも100個の恒星を導入テストして調整し、導入精度が向上されたようです。導入精度はもともと良好だったのですが、惑星を導入して一般の人に高倍率で見てもらうときに、視野から少しずれるのでした。これは、この望遠鏡がコンピュータで操作しないと向きが変えられないので、重要な問題なのです。ハンドコントローラで向きが変えられるのならその程度の微調整は簡単ですが、コンピュータ操作しなければならないので、2人がかりじゃないと星を中央に持ってこられないんです。一人がコンピュータを操作し、もう一人が「もうちょっと右….、いや、やっぱり土星の輪の方向に少しだけ….、ちがうちがうその逆の方だ」なんてやってるんです。一般公開のときにこんなことするのは時間の無駄なので指摘されていたのでした。
そのほかにも光軸がさらに精度良く調整されたり、斜鏡の有効径が少し大きく改良されたりしているようです。反射鏡が早くも汚れていたとかで、綺麗にクリーニングされています。黄砂が飛び込んでくるのですぐ汚れるんです。
また、冷却CCDカメラで撮影したときに周辺にできるゴースト状の白い輪は、門田さんの指摘により、原因と思われるものが判明しました。この対策はそんなに費用のかかるものではないので、近いうちにメーカーに説明し、対策してもらいます。
多くの専門家や観測者からの助言をいただき、そしてメーカーの誠意ある対応により徐々に理想の望遠鏡システムに近づいています。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.