小惑星2008 XD2発見

 12月6日の早朝、芸西天文台チームが見つけていた小惑星に 2008 XD2 の仮符号が付いたことが、小惑星センターから知らされました。これで新生・芸西天文台で5個目の仮符号取得です。
 小惑星を1個発見(仮符号を取得)するだけでも結構な労力がいるんですよ。なんと言っても、小惑星は数が多いです。芸西の設備で10分間くらい露出すると20等級まで写るのですが、3枚ほど撮ってブリンク(アニメーション)させてみると、1画像に4つ~7つの移動天体が写っています。18等級くらいの明るいものはほとんどすでに正体が判明していて、測定用の画面にその天体名が赤い文字で表示されるのでするわかります。しかし、1~2個は正体がわからないものがあります。それの位置を正確に測定するのです。測定すると今度はそのデータをもとに軌道を計算します。この時点ではあまりにもデータが少ないし、観測期間が短い(多くの場合45分程度しかない)ので一般軌道は計算できません。小惑星の軌道の特徴を考慮した一定の前提条件のもとで計算するバイサラ軌道という手法を使います。
 次の日、または次の観測できる日にそのバイサラ軌道から求めた位置に望遠鏡を向けて、再び、10分露出を3枚程度撮影するのです。その画像をブリンク(アニメーション)させてみて、移動天体があるか調べます。軌道の精度が良ければ画面の中央付近またはどこかに前回とほぼ同じ方向に向けて移動する天体が写っているのでそれを正確に測定します。そして、前回の観測データと今回の観測データの両方を用いて軌道を計算するのです。もし綺麗に軌道が計算できたら、前回の小惑星と今回の小惑星は同一のもをと考えられるので、追跡に成功したことになり、’小惑星の発見’として、国際天文学連合の機関である小惑星センターに報告するのです。小惑星センターでさらに軌道が計算され、現時点でどの天体とも軌道がつながらない場合は、仮符号という小惑星に付けられる固有の記号が付けられ、観測者に通知されます。ここまでやって、観測者(発見者)はホッと一息と言う感じです。
 しかし、実際には1つの未知の小惑星を追いかけている間に次々に未知の小惑星が2つ3つと見つかります。後で見つけた小惑星を追いかけているうちにまた新しい未知の小惑星が飛び込んできたりします。もうこうなると、どれがどれやらさっぱり分からなくなります。11月30日から12月3日にかけてはそんな状況でした。もうこうなると次々に記号をつけて測定し、いろいろな組み合わせで軌道計算するしかないです。計算してみて、ピタリと一致する天体があれば、その2つまたは3つの天体は同一のものと判断するんです。毎日仕事が終わったあと天文台に行き、0時とか2時まで観測し、家に帰って天体を探し、軌道を計算し、3時~4時に寝て、次の日ちゃんと仕事に行き、また追跡するために芸西へ….。週末はたくさん写った移動天体の謎解きをやってました。
 やっと落ち着いたのですが、2つの追跡できてない未知の移動天体が残りました。軌道は計算しているのですが、月が明るくなってその位置に割り込んでくるので、たぶんもう追跡は無理でしょう。
 これから月が明るくなるので暗い天体は写らないし、新発見の可能性も少なくなるので自宅でデータ整理やホームページの更新をしたり、天文の本を読んだりします。しばらくはのんびりモードです。


どの小惑星とどの小惑星が同じものか謎解きをやっている図



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