石垣島天文台(国立天文台)によって、太陽の周囲を約6年4カ月かけて回っているファン・ネス彗星(213P/Van Ness)が2つに分裂したことが発見されたというニュースが伝えられています。
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この彗星本体は15等級なので、多くのアマチュア天文家が撮像することができるほど明るいのですが、分裂した方の彗星核の明るさは、巨大天文台によって20等級~21等級で報告されており、個人で所有できる望遠鏡では観測することができないほど極めて暗いものです。
そこで、芸西天文学習館(芸西天文台)の70cm反射望遠鏡で写すことができないかとチャンスを狙っていました。
下はそのファン・ネス彗星の軌道図で、2011年8月9日現在の位置を示しています。赤い色がその彗星の軌道です。ご覧のとおり、火星と木星の間を少し傾いて楕円形で回っています。太陽の周りを回っているのは地球や木星などの惑星だけではなく、このような近くを短い周期で回っている短周期彗星もいくつかあるのです。
ファン・ネス彗星の軌道図
ファン・ネス彗星は現在みずがめ座とペガサス座の境界付近にあり、最も明るく写る南中時刻は午前2時過ぎです。そんな時刻に観測していたら、次の日は仕事になりませんし(普通のサラリーマンなので)、週末でも月明かりがあったら写りません。それに長時間連続して晴れてないと写せません。あまり気長に待っていると小さな彗星核は消滅してしまうかもしれません。などなど、なかなか条件が厳しいです。
そんなチャンスがやってくるのだろうかと思っていましたが、それは突然やってきました。8月6日の一般公開「手作り望遠鏡教室」が終わった夜でした。
春からずっと雲の多い毎日でしたが、めずらしく快晴の夜になりました。
彗星が高く昇ってくるのをじゅうぶん待って、何枚か試し撮りをした後、本気モードで10分間シャッターを開けっぱなしで撮ってみました。
さすがに暗いので、たった1枚ではどれが分裂した核かわかりません。もう一枚10分露出を行い、今度は2枚を交互にコンピュータの画面に表示させてみました。彗星は移動するので、何枚かを連続表示させると、映画と同じ理屈で動いて見えるんです。尾の中にあるはずなので、よくよく眺めてみると、なんとなくこれかな~というわずかなものがあるようにも感じました。
もうこうなったら、覚悟を決めて雲が出るまでとにかく撮りまくっておいて、あとで画像解析するしかありません。
連続撮影開始です。10分露出を何枚もなんまいも繰り返し行いました。快晴の夜は写したい天体がたくさんあるのですが、もうそちらは無視して、ファン・ネス彗星だけに集中です。
午前0時37分から連続撮影を開始して、終わったのは3時37分でした。
あと30分で空が明るくなるという時刻までがんばりました。
っで、なぜ30分を残して終了したのかと言うと、東の空高くに上ってきた木星を動画で撮像したかったのです。木星のお話は次回にまわします。
家に帰ってから落ち着いて17枚の画像を調べました。
写っています!!
がんばった甲斐がありました。
下の画像が10分露出の16枚を彗星の動きに合わせて合成したものです。A核というのが従来の彗星本体で、B核というのが分裂した彗星核です。
クリックすると大きな画像が表示されます
ファン・ネス彗星のA核とB核
213P/Van Ness
芸西天文台
ニュースサイトでは「子が親を追っている」という表現をされていますが、A核もB核も下の画像で言うと右上に並んで移動しています。後にアニメーション画像を作成してお見せしたいと思いますが、追っているというより、仲良く並んで移動しているという感じです。
A核から右下に細く長く延びているのが彗星の尾です。
それより気になったのは、A核から左上に延びている一筋の光!
これは何でしょうね?
このわずかな光の正体も調べてみたいです。
その後、B核の精密な位置を測定して、光度も測定し、国際天文学連合に報告しました。
芸西天文台の設備の能力をフル活用できた貴重な観測となりました。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.
5 comments for “ファン・ネス彗星の分裂核の撮像に成功!!”