話題のベテルギウスを撮ってみました

 2~3週間ほど前から「2012年にオリオン座のベテルギウスが超新星爆発する」というショッキングなニュースが流れていて、結構盛り上がっているわけですが、それなら、生前のベテルギウスを写しておこうと、8月7日の徹夜観測の最後(空はすでに明るくなっていた)に写真を撮り、ついでに動画まで撮りました。
 そのベテルギウスの位置ですが、下の星図をご覧ください。
 現在は明け方空が青白くなる頃、東の空を見ると下の様な位置にオリオン座が昇っています。オリオン座の左上に一層明るく輝くオレンジ色の星。これがベテルギウスです。明るさは0.6等前後(変光星)と非常に明るいので、ほとんどの人は肉眼で明るく見ることができます。赤色超巨星と言って、直径が太陽の数百倍もある有数の巨大星です。


ベテルギウスの位置

 よく、日本人が超新星を発見したというニュースが流れますし、世界ではその何十倍もの超新星が発見されていますが、それらはすべて系外銀河のものです。つまり、私たちの太陽系が属している銀河(ここでは天の川銀河と呼ぶことにします)の中で発生したものではなく、ずっと遠くの銀河の中にある1つの恒星が超新星爆発したものが発見されているのです。ニュースで「M51に超新星が発見された」と言われると、M51銀河の中にある恒星が超新星爆発を起こしたという意味です。ほとんどは何百万光年とか何千万光年ものかなたでの出来事なのです。
 では、私たちの天の川銀河(直径は十万光年程度)の内部では超新星爆発は起こったことがないのでしょうか。
 実はあります。
 まだ天体望遠鏡が発明されてない頃に、肉眼で見られた数個の超新星の記録が残っています。また、記録は残っていませんが、最近の観測データから、遠い昔に超新星爆発したものの残骸であることが分かっているものもいくつかあります。
 それらの多くは現在でもX線天文衛星や電波望遠鏡等で観測され、研究され続けています。小型の望遠鏡を使えば目で見ることができるものもあります。おうし座のM1(かに星雲)です。これは1054年に超新星爆発を起こしたものが残骸として残っているものです。
 では、天の川銀河で発生した超新星爆発はどの程度の距離で起きたのでしょうか。だいたい、3,000光年~7,500光年の距離です。単位を間違わないようによく読んでくださいね。"万光年"と"光年"では1万倍違いますので。

 このように、超新星爆発は遠くは数千万光年、近くなら3,000光年での出来事です。

 では、ベテルギウスはどの程度の距離にあるのでしょうか。
 640光年です!
 わずか640光年ですよ。
 太陽の数百倍もある恒星が、わずか640光年の距離で大爆発したらどんな光景が見られることか。もし夏の間だったら、太陽が2個あるように見られるかもしれません。冬だったら、夜になっても第2の太陽として東から昇り、夕暮れ時のような明るい夜が続くのかもしれません。そのようなことは何万年に一度のことになるわけで、私たちは歴史の証人になるのです。

 そこで、私はその歴史的な瞬間を写せるかもしれないと思い、芸西天文台の70cm反射望遠鏡を向け、310倍に拡大した接眼レンズにデジカメを押しあてて1枚写してみました。
 下の画像がそれです。


ベテルギウスの写真

 まさに、その歴史的瞬間。
 超新星爆発の瞬間の画像……。

 っというのはウソです。

 東の低空だったので、厚い大気が激しく揺らいで乱れているだけです。大気に激しく揺らぐ恒星を1/30秒で写しとめると、こんな姿に写るんです。「超新星爆発の瞬間画像」と言っても十分騙せる画像ですね(汗)。

 下は、ベテルギウスを動画で撮ったものです。動画だと多少安定した姿で写っています。特に異変は無く、いつものベテルギウスです。

 と、まあ、超新星爆発の簡単な説明と、自分で撮ったベテルギウスを掲載しただけでこの記事は終わってしまいますが、ちょっと内容が薄かったでしょうか?

 残念ながら、2012年に超新星爆発が起きるのかどうかを議論できるだけの知識は持っていません。

 しかし、気象衛星からの膨大なデータとスーパーコンピュータを使ったシミュレーションなどを長年研究している天気予報ですら、1週間先はほとんど当たらない(台風の進路は大まかには当たりますね)のが現状ですから、その何万分の一の観測データしかない超新星爆発の予想は、けっして確率は高くないと思うのです。超新星爆発の直後からの研究データはある程度蓄積されて多くの研究成果が出ていますが、爆発する直前のデータなんかあるわけないです(お隣の銀河である、アンドロメダ大銀河でのデータが1~2件あるのかも?)。コンピュータシミュレーションで、すでに分かっている爆発後の現象と、予測される爆発前の現象をうまくつなげるような研究はされているのだと思いますが、まだまだこれからの研究課題だと思います。

 超新星爆発を止めたり、太陽系や地球への悪影響を阻止する技術はありませんので、せめてできることと言えば、怪しい宗教や、怪しげな話題で印税稼ぎをする人たちに、人生を誤った方向に導かれないように注意することでしょうか。



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2 comments for “話題のベテルギウスを撮ってみました

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