今年は日本も珍しい天文現象が多くみられる年で楽しみにしていたのですが、5月21日の金環日食は肝心の金環状態の時には雲に覆われて見られず(見られた場所は多かったが芸西天文台にいた私は見られなかった)、6月4日の部分月食も芸西天文台で一般公開を行ったのに曇って一瞬も見られず、今度の金星の太陽面通過が見られなかったら全滅です。しかも例年だったら梅雨入り宣言のころ。
あきらめかけたのは台風の発生。太陽面通過の日に台風が通過しそうになりました。
6月6日、金星が太陽の前面を横切るその朝、高知県の平野部はみごとな晴天になりました。台風が速度を上げて通り過ぎたのです。
人間欲が出るもので、弱気な時には、『6時間もの長時間のショーなので、その間一瞬でも晴れ間がのぞいてくれたらいい』と思っていたのが、これだけ晴れると今度は『第1接触から第4接触まで完璧に観測したい!』となるわけです。
芸西天文台を目指す
金星潜入の22分前
太陽の真下の山のふもと付近に天文台がある
家をぎりぎりの時間に出発したのでコンビニでお茶を買う時間すらなく天文台に飛び込みました。
15cm屈折望遠鏡に装着するために段ボールに9cmくらいの穴をあけてそこにアストロソーラーシートを貼り付けました。いつもは望遠鏡にそのまま貼り付けるのですが、ちょっと眩しいので、今回は一般参加者の安全を考えて9cm程度まで絞り込んだのです。こんな準備は前の日までにやるのが普通でしょうが、雨が降ったりすると労力が無駄になるので、直前にあわててやるのです。
金星の潜入まであと3分とかっていうときにまだハサミでチョッキンチョッキンしてました ^o^
潜入1分前、どうにか15cm屈折で撮影する準備が完了しました。
金星の太陽面通過の撮影準備が完了
次に自分の機材です。これは車を運転中に信号待ちで作った撮影システム!このアストロソーラーシートは金環日食の教訓で購入した減光率の低い撮影専用のものです。レンズはTAMRON
AF 70-300mm F4-5.6 Di LD MACRO 1:2で、これを300mmにズームして手持ちで撮影するつもりなのです。
PENTAX K-5
TAMRON AF 70-300mm F4-5.6 Di LD MACRO 1:2
この時すでに潜入は開始しているはずです。脚立に登ってピント合わせしている暇がないので、とりあえず300mmにセットして手持ちでバシャリ。7時12分08秒でした。自動露出だと白すぎるので、この後マニュアル撮影に切り替え。
07時12分08秒 潜入している気配はない
(トリミングしています)
PENTAX K-5 + TAMRON AF 70-300mm F4-5.6 Di LD MACRO 1:2
300mmでの画像を確認している暇はなく、次は15cm屈折で撮るために、脚立に駆け上がりました。太陽がまぶしいです。
70cm反射の背中に乗っている15cm屈折
精密にピントを合わせている暇はなく、とにかくバシャリ。潜入は開始しているはずなのですが、大気の揺らぎに埋もれて確認できません。。
07時12分32秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
2秒後に再度撮影。こちらは気配が写りました。左側がかすかに黒くへこんでいる部分です。ここからは天文台の機材と自分の機材を交互に撮影しまくりです。
07時12分34秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
第2観測室では投影板で監視していた講師と某宇宙女史も気づき、「見ている場合じゃない、撮影~、撮影!!」と活動が開始しました。外ではどんなふうに観測しようとしているのか眺める暇はないので、声で気配を知るのみです。
開始から数分経って少し落ち着いてきました。半分ほど潜入したところです。
07時18分49秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
再び緊張の時間が。
第2接触です。
この前後は連写連写です。
07時28分57秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
下の画像の大きな丸いものは金星ですが、その他の黒いほこりみたいなものは太陽黒点です。巨大な黒点はないのですが、数は多かったです。
08:33:35
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
ここまで来てひと安心。ここからは観望者モードです。9時から開始の一般公開の進め方を打ち合わせしながら時々バシャリです。
どうですか~、この美しい空。まるで偏光フィルターで撮ったかのように写っていますが、ノーフィルターです。金環日食のときの残念な思いがあるだけに、より美しく感じます。
天文台の上から西を眺める
松木講師がなにやら大きなものを組み立てています。なんでしょう??日立製作所の太陽観測装置?
松木講師開発の怪しい装置
中をのぞくと….。
ピンホール投影箱でした。
下の画像ではよくわかりませんが、白いのが太陽なのですが、その中にちゃんと金星が黒い点に写っていました。松木講師も、金星が投影できるものかどうかはわかっていなかったようで、はたして満足そうでした。
この投影箱は5月21日の金環日食の時に琴ヶ浜で開催された一般公開で使われたもののようで、その時の記録写真が貼り付けられていました(この時、見事に金環状態を捕らえた)。強運の投影箱です。
ピンホール投影箱をのぞく
一般公開の時間が近づき、第2観測室は投影板の準備が完了していました。そこで、ドームの15cm屈折は参加者に直接見てもらうためにカメラを取り外し、接眼レンズに交換することにしました。
第2観測室は投影板で観測
さあ、あとは参加者の来場を待つばかりです。
けっこう熱くなってきました。
8時48分頃
一般公開が始まるとテレビ局や新聞社の取材も始まりました。
取材を受ける参加者
テレビカメラは2~3社いたでしょうか。
ドーム内でインタビューしたり、外でインタビューしたり大忙しです。
私も新聞社の要請で、おなじみの子供さんとポーズをとります。私のカメラになぜ自分が写っているんだろうと思ったら、某宇宙女史が撮っていてくれたのでした。感謝です。
すごく綺麗なテレビ局のリポーターさんがいました。収録が始まったので、一時的にドアを閉めたりして取材協力しました。
テレビ局収録中
私も再びテレビ局の要請でポーズを付けます。
この小さなお子さん、大人になるまで今日のことを覚えていてくれるかな?ちょっと無理か….。
お姉ちゃんの方はどうにか覚えていてくれるかもね。
次にみられるのは105年後のことだから覚えていてほしい。
こんなふうに、一般の人に見てもらったり、取材を受けたりしながらも、時々自分の機材で手持ち撮影しました。かすかなうす雲がかかるときがあり、下の画像はちょっとぼ~っとしています。
11時23分34秒
PENTAX K-5 + TAMRON AF 70-300mm F4-5.6 Di LD MACRO 1:2
12時です(この時12時という認識はなかった)。空の様子を記録しました。朝時間がなかったのでコンビニで朝食を買うこともお茶を買うこともできなかったので、お腹は空くし、のどが渇くで大変でした。
12時
一般公開は12時で終了する予定だったのですが、自分の機材で撮影する人、投影板で撮影する人、コリメート撮影する人、講師のナマ解説や講義室でのお話を熱心に聴く人と、それぞれが好きなように楽しんでいて、12時で終わる雰囲気にはなりませんでした。
岡村講師(名誉講師?)は自分の機材で投影
13時を過ぎて、終盤になりました。講師や参加者の皆さんの動きがあわただしくなってきました。
ここで再び15cm屈折にNikon D700を装着し、記録再開です。
13時02分38秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
一般の皆さんは投影板にくぎ付けです。
私は首から自分の機材をぶら下げ、脚立に昇って連写です。
この時、うす雲がかかっていたのでぼ~っとしています。
13時29分22秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
連写です!
雲が晴れた。らっきーっ。
13時30分35秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
あ~、またうす雲が…。
もうちょっと。もうちょっとだから。
雲で暗るさが変化するのでシャッター速度を激しく変更しながら連写です。
13時41分22秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
まだわずかに金星の像が残っている。
うわ~、ついに雲が濃くなってきた。シャッター速度を1/160秒まで遅くする。
あと30秒でいいから…。
13時46分45秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
金星の太陽面通過の終了直前から終了にかけて濃い雲が覆ってきました。まるで、ステージに黒い幕が下ろされるかのようにフェードアウトしていきました。
13時47分03秒
15cm F8屈折 + Nikon D700
Copyright (C) 2012 芸西天文学習館
この後は曇ったままで一度も晴れ間が現れることはありませんでした。前日の台風、朝からの快晴、終了と同時に曇りと、ほとんど神がかり的な天体ショーでした。
金環日食の時にはかなり落ち込んだのですが(その時の記事はこちら)、やっと生きる勇気が湧いてきました(笑)。
今回の記事は時系列で書くだけで精いっぱいになりましたが、撮った画像は200枚あるので、いずれ合成画像など作成して掲載したいと思います。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.