先日、『まあ、うるう秒が挿入されたからといって慌てて対策をしないといけない人はほとんどいないと思いますが。』なんて書いたのですが、実は慌てました。うるう秒挿入なんて自分には関係ないと思っていたのですが、大有りでした。
軌道計算プログラムを修正しないといけません。
なぜかというと、世界各地から届く彗星や小惑星の観測データは時刻が世界時(我々が一般に使っている日本標準時-9時間)ですが、この世界時は前記のように1秒挿入したり削除したりして、頻繁にずれます。これではまともな計算ができないので、”修正されない時刻系”のひとつである、力学時に変換して計算しています。力学時は原子時より32.184秒進んでいますが、修正されないので計算に都合が良いのです。 うるう秒が挿入されたり時刻系にその他修正があるときは、それらを考慮して力学時を計算しなければならないのです。
「うるう秒が挿入されるのですが、OrbitLifeではどのようにすれば良いですか」という問い合わせがあるまで気づきませんでした。まったくお恥ずかしい….(OrbitLifeというのは私が作成して、インターネットで一般公開している軌道計算プログラムです)。
プログラムを修正しようと電卓でいろいろ計算していたら、なんか…、変!
調べるまでも無く、1991年1月1日のうるう秒の挿入までしか対応していないことが判明しました。
ガ~ン。
その後6回のうるう秒挿入があったので、力学時が6秒ずれたまま計算していました。まさかこんなミスがあったなんて。
実はその1ヶ月ほど前に、ある軌道計算者から「OrbitLifeは近日点日が数秒ずれているようだ」とのメールが届いていたのです。数秒の”誤差”ではなく、”ずれている”という表現で。しかも、「力学時の計算はどうやってますか」という的を突いた内容でした。
近日点日は一般軌道の場合小数点以下5桁目までで表現するので、数秒のずれは最小桁に現れます。私は、この最小桁のわずかな違いからは「ミスがあるのでは」とは気づきませんでした。他の軌道要素との関係から生じる結果だろうと考えていたのです。
本気で計算に取り組んでいる人からの指摘はもう少し真剣に話を聞かなければならないと反省しました。
うるう秒挿入がなければ永遠にこのミスに気づかなかったかもしれません。
ちなみに、「うるう秒が挿入されるのですが、OrbitLifeではどのようにすれば良いですか」と問い合わせてきた人は、その軌道計算者だったのでした。
重ね重ね、お礼申し上げます。
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静岡大学人工衛星STARSプロジェクトを技術面で応援しています。芸西天文台(高知県立芸西天文学習館)で天体観測。小惑星2個発見。一般公開では星空案内も。彗星軌道計算ソフトOrbitLife公開中。流星自動観測/ラズパイ/電子工作/2アマ/PENTAX/ドローン。MPC Obs Code D70.
1 comment for “うるう秒挿入で判明した軌道計算プログラムのミス”