関勉先生と二人で観測しました。

(昨日の記事の続きです)
 芸西天文台の「春の天文教室」は最高の条件に恵まれて楽しく行われました。その夜、生徒さんや講師陣が全員帰って関先生と私の2人だけになると、機器の使い方や観測風景を見せてくださいました。
 まず、カメラですが、下の画像のようなものです。これはMamiyaだったかの6×7カメラ(フィルムが大変大きい)です。通常のカメラのレンズに相当する部分は、望遠鏡がその役割になるので、実際にはフィルムを入れる部分だけを使います。

 先生は、リュックの中に手を突っ込んで、
「あれ?」
「う~~~~ん」
ゴソゴソ、ガサガサ…..。
「う~~~、どこへ行ったろう????」
「う~~~」
ってしばらく何かを探していると思ったら、
「あった」
と言って取り出したのがT-MAX 400という白黒フィルム。
よく見る35mmフィルムより縦に長い箱に入っていました。これが6×7フィルムなんですね。
 下の画像はフィルムの装填風景です。

 このカメラを60cm反射望遠鏡の先に、内側に向けて装着します。つまり、手前にある反射鏡で1回反射された光をカメラで撮影するんです。
 望遠鏡は巨大なので180cm程度の台座に乗って装着します。

 私も台座に上らせていただきました。
 下の画像は、望遠鏡の先から見ているところです。望遠鏡の中央の副鏡の部分にカメラが取り付けられています。奥の方に直径60cmの鏡が見えています。望遠鏡本体の巨大さに比べると小さく感じます。

 ここから先はドーム内の蛍光灯を消して、真っ暗な中での作業になります。
 まず、プリンターから印刷した彗星の位置推算表を参考に、コントローラを操作して導入します。赤経軸(東西方向)はコントローラで動くので楽ですが、赤緯軸(南北方向)は壊れているので、全身の力を使って動かさないといけません。バランスは完璧に調整されているとは言っても何トンもある望遠鏡の角度を変えるのは体力が要ります。幸い、エンコーダは壊れていないので手で動かしても、望遠鏡が向いている座標はコントローラに正確に表示されます。
 今夜の撮影は、現在一番明るいC/2007 E2 (Lovejoy)彗星です。60cmの背中に乗っている20cm屈折望遠鏡を覗きながら微調整をしていた先生が、
関先生 「ん~~、かなり淡いですが見えています」
関先生 「そうぞ、見てみてください」
とのこと。
11等級まで暗くなっているLovejoy彗星が眼視で見られるとは思ってなかったので、期待して覗いてみました。
私 「…….。」
関先生 「どうですか」
私 「…。何も見えません。」
関先生 「見えませんか。お~~~ほっほっほっ」
っと笑われてしまいました。
しばらくじ~っと眺めていたんですが、見えません。どんなに集中しても見えません。
あきらめて、目をそらそうとしたら、気のせいかと思うような、かなり大きな宇宙のムラのようなものが見えました。
 そうでした。人間の目は中央部分は解像度が高いが感度は低く、目の中央からそれた部分は解像度が低いが感度が高くなっているのでした。ですから、目をそらそうとしたときにうまいぐあいに感度の高い部分がキャッチしたんです。コツがわかってきたので、ちょっと目をそらしぎみで観測してみました。
私 「あっ、なにかあります」
私 「目をそらしたら何かあるのがわかります」
関先生 「そうでしょう」
私 「かなり大きいですね」
関先生 「はい、そうです」
その姿は、いつも冷却CCDカメラで撮像している彗星の姿とはまったく異なっていて、ものすごく(本当に限りなく)淡い雲がある感じで、中央集光してないので、それが天体だとは到底思えません。これが11等級の彗星の姿なんだそうです。そういえば、昨年塩塚高原で眼視観測した11等級の彗星もこんな感じでした。CCDで撮像した彗星像よりも、はるかに広い範囲にコマが広がっているのがわかります。
 11等級の彗星を見ることができたので満足し、撮影開始です。
 関先生は真っ暗なドーム内で、赤いライトをつけて市販の普通のノートに天体名と撮影日、赤経、赤緯を記録して、2台ある電波時計を交互に見ています。
 秒読みを始めたかと思うと、なにやら棒を使って望遠鏡の少し上の方にあるボタンを器用に押しました。するとバシャという音がしました。これがカメラのシャッターを押すスイッチだとか。
 この時にドームの中にあった杖(よく年配の人や足の不自由な人が持っているT型のやつ)の意味がわかりました。シャッターを押すための杖だったんですね。
 2分間の露出中はドームの中ではなにもすることがないので、外に出て星空観望です。春には珍しく黄砂がほとんど無い、非常に綺麗な星空が見えていました。微恒星がたくさん見えるのでザラザラした感じの星空です。
私 「春にはめずらしいすばらしい星空ですね~」
関先生 「そうですねえ。西の空にまだ月があるので、あれが沈んだらもっとよく見えるようになります」
私 「からす座が鮮明に見えますねえ」
関先生 「物凄いですよ~」
私 「来年望遠鏡が新しくなって、冷却CCDカメラが導入されたら楽しみですね」
関先生 「そうですねえ。何等まで写るでしょうか?」
私 「この前、からす座がまともに見えないような日に、20cm反射でNGC 4477を8分露出で撮ったときに、18.6等まで写っていましたから…..」
関先生 「おお!そうですか」
私 「19等級なら、もう楽に….」
 (現在の芸西天文台はフィルム写真なので、18.5等を撮るのにも何十分の時間を要しています)
 という感じで、満天の星空の下で1年後の新らしい天文台でのことを想像しながら過ごしました。
 この夜は2枚だけ撮って終了です。
 下の画像は撮影が終わってカメラを取り外しているところです。

 その後は雑誌社用の写真を私がカメラマンになって撮影しました。プロカメラマンの目線と違うので大丈夫だったか心配です。
 下の画像は携帯電話のデジカメで撮りました。この望遠鏡は年末ころに取り壊されます。赤道儀に乗っている4つの望遠鏡はそれぞれ別々の場所に嫁いでいく方向で検討されているようです。

 今後は毎月1回くらいは講師として参加したいと思います。講師と言っても、教壇でお話しするのはベテランの本物の先生方がおられるので、私は望遠鏡を動かしたり、そばで解説するようなことをやっていきたいと考えています。



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