D/1896 R2(Giacobini)ジャコビニ彗星が生きていた

 9月11日0時26分、中野主一さん(国際天文学連合・小惑星センターの軌道計算者)から、"Re: New Comet"というタイトルのメールが飛び込んできました。本文には"Itagaki-Kaneda"の文字があり、バイサラ軌道で計算された軌道要素と位置推算が記載されていました。もうほとんど電報のようなメール(一般の人が見たら暗号メール)で、それ以上の詳しいことは記載されていませんでした。しかし、彗星観測者にとっては十分すぎる情報です。メールのタイトルが"Re:
"となっているので、もともとだれかに返信しようとして書いた文を、彗星があるわし座が西の空に沈む前に観測できるよう、大至急国内の特定の観測者に配信したのでしょう。
 その後4時24分になって詳しい情報が配信されてきました。板垣公一さんと金田宏さんがみずがめ座とわし座の境界付近で14等級の彗星を発見したという内容でした。久しぶりの日本人による彗星の発見です。そして、この彗星はD/1896
R2(Giacobini)彗星だというのです。彗星名は普通頭に"C/"または"P/"の文字が付きます。ところが、このジャコビニ彗星は頭に"D/"と付いています。これは何度も回帰したはずなのに、だれにも観測されなくて消滅した、または分裂したり惑星に衝突して消滅した彗星に付けられるコードです。
 発見者はジャコビニ彗星を探していたのか、それとも何かの天体を写していたときに偶然彗星が入ってきたのかまだ詳しい情報は流れていませんが、もしジャコビニ彗星を探していたのでなければ、「自分の名前が付く彗星を発見したぞ」と思ったに違いありません。ところが、その直後に「あれはジャコビニ彗星だ」と知らされたら…….。もしかしたら、ひどくがっかりしたかもしれません。
 しかし、"D/"と付いた「見失われた彗星」を再発見するのは新彗星を発見するのと同じくらい、いや、新彗星を発見するより価値のある場合があるのです。ジャコビニ彗星などはそのケースではないでしょうか。
 それにしても、あんな月明かりの強い日にいったい何を写そうとして、わし座に望遠鏡を向けていたのでしょうか?せいぜい16等~17等しか写らないと思うので、少なくともジャコビニ彗星を探していたとは考えられません。天の川の中の新星でも捜索していたのでしょうか?
 いずれにしても、月が明るい星空の下でも探し回るくらいの気迫がないと発見なんかできるものではないと反省した次第です。



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