気合い入れてPANSTARRS彗星を撮りました

 ハワイのハレアカラ山にあるPan-STARRS 1望遠鏡が10月6日(UT)に早くも(?)1個目の彗星を発見したのですが、これが暗いのなんのって、発見した時の光度は21.4等と報告されました。その後も19等後半から20等級と、まったく明るくならないので1ヶ月以上経過しても観測数はたったの21個しかありません。観測した天文台は6ヶ所のみで、多くは1mとか2mクラスの望遠鏡です。
 このまま太陽方向に移動すると観測できなくなるし、再び太陽から離れても観測データが少ないと軌道計算の精度が悪いので、探すのが大変になります。そこで少しでも観測数を増やし軌道の精度を高めるために、芸西天文台の70cm反射望遠鏡で観測してみようと思いました。

 下は現在計算されているP/2010 T2 (PANSTARRS)の軌道図です。時計の針と逆方向に移動していますので、徐々に太陽方向に移動し観測できなくなることがわかります。

 11月10日に天文台に着くと、前日までにあった濃い黄砂は無くなっているものの、カシオペア座付近の天の川は見えないという感じで、あまり透明度は良い夜ではありませんでした。
 試しに10分露出で2枚撮ってみました。すぐその場で画像処理し、測定ソフトで2枚の画像を交互に表示させ、予測位置に移動天体が写っているかどうか調べました。動いている天体があるような、ただの感度ムラのような気もするなんとも自信のない画像しか得られませんでした。
 これは20等級だなと感じたので、コンポジット作戦を開始しました。コンポジットとは、同じ位置を何枚も撮像し、画像を重ね合わせて、1枚では検出できないような暗い天体を浮かび上がらせる技術です。これの短所はとにかく時間がかかることです。
 3枚コンポジットすればどうにか検出できるだろうと思ったので、まず10分露出で3枚撮像してコンポジットしてみました。どうにかそれらしいものが写っています。本当に対象の彗星であることを確実にするためには3つくらいのデータが必要なので、3枚のコンポジットした画像が欲しいところです。そのためには全部で9枚撮らないといけません。
 気合い入れて10分露出をあと6枚撮ります。いつもはこんなことをやっているうちに雲が出てきて中断したりします。途中で長時間中断するとコンポジットしても周辺の星がモールス信号みたいな点線になるので今度は測定ができなくなるのです。
 この夜は望遠鏡の調子も比較的良く、12枚撮像した中で2枚の追尾エラーの画像ができてしまいましたが、雲の通過もなく約2時間で10枚撮像できました。
 測定は次の日に自宅で落ち着いて行いました。3枚ずつコンポジットした3枚の画像からの測定は順調に進み、どうにか3観測取得できましたので、軌道計算担当の村岡さんと関さんにメールを送信して私のお仕事は完了しました。すぐに村岡さんにチェックされ、小惑星センターに報告されました。
 光度は19.8等でした。
 下の画像は10枚の画像をコンポジットしたものです。彗星の移動に合わせてコンポジットするので、周辺の恒星は流れて写りは悪いですが、彗星の光は1点に集中して明瞭になるのです。
 芸西までの往復2時間、撮像2時間、測定1時間と、たった1個の彗星の観測のために5時間を使ったことになります。
 この貴重な画像をご覧ください。
 (それにしても、背景が汚いなあ~。(ぼそっ))

[P/2010 T2 (PANSTARRS)の画像]
P/2010 T2 (PANSTARRS)



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