冷却CCDカメラで撮像中の画面

 高知県は多くの場合はシーイングが悪い、つまり、上空の大気が乱れていて、星がキラキラまたたき、高倍率の望遠鏡で星を見ると水の中を流れているのかと思うように形状が崩れています。カメラで撮像する場合でも星が前後左右に小刻みに勝手き動くので、ピンボケのようになり、暗い天体が写りづらいのです。
 今回は一般の人が見る機会が少ない、冷却CCDカメラで撮像中の映像をお見せします。
 画面は芸西天文学習館(芸西天文台)のドームにある撮像用コンピュータの画面を撮影したものです。

M54を撮像中の動画

 中央にある星の固まりは、いて座方向にある非常に小さな球状星団です。青色のプログレスバーが右方向に延びている時はシャッターを開けて露出中であることを意味します。その後3秒間画面が固まったようになりますが、この時に冷却CCDカメラからコンピュータに撮像した画像が送信されています。コンピュータに画像が届くとすぐに画面に表示されています。撮像した画像があまり綺麗でないことに驚くかもしれませんが、心配は無用です。不要なノイズを除去したり、補正することで、光度や精密位置測定することができますし、画像処理すれば綺麗な画像にできるのです。
 撮像中の画面をじ~っと眺めていると、望遠鏡が動いたんじゃないかと思うくらい星が移動することがあります。これもけっして望遠鏡が動いたのではありません(たまに望遠鏡の追尾が狂うことがありますが…)。大気の影響で動いているのです。また、ピントがひどくボケることがあります。これも望遠鏡のピント位置がずれたのではなく、大気の影響で星像がぼやけるのです。
 こうなると、ピントを合わせるのに非常に時間がかかります。量産品の個人向け望遠鏡は、ピント合わせのつまみがあるので、指先の感覚で素早く合わせることができますが、大型望遠鏡はそこまで軽快に副鏡や主鏡の位置を動かせないので、どうしても時間がかかってしまいます。
 (一般公開の時に使う眼視観望装置の方は接眼レンズの所にピントリングがあるので、簡単にピントが合わせられますが、撮像用のベントカセグレン焦点にピントリングを付けるわけにはいきませんので)
 芸西にこの望遠鏡がやってきてしばらくは、ピント合わせがうまくできずに、最初の1枚目を撮るまでに2時間もピント合わせをしていました(それでもピンボケでしたが)。その後も、毎日、毎日ピント合わせの練習ばかりしていました。2時間かけてやっとピントが合ったと思ったら、気温の低下でピントがどんどんずれていくし….。やっとピントが補正できたと思ったら雲が出てしまい、半泣き状態になったりしました。
 その後、多くの失敗をしながら経験を積んで来ましたが、大気が不安定な時は今でもピント合わせは難しいと感じます。

 まあ、こんな画面とにらめっこしながら観測しているというお話でした。

 下の画像は上記の動画を撮った日に、60秒露出を3枚撮像し、コンポジット(重ね合わせ合成)して、美しく画像処理したものです。非常に小さな球状星団なので、大気が悪かったわりには良く撮れているのかもしれません。

[M54(いて座の球状星団) - 芸西天文台]


 
 



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3 comments for “冷却CCDカメラで撮像中の画面

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