恒星拡大撮影の色ずれ補正の試み

 いつも芸西天文台では暗い彗星の観測を行っているのですが、満月前後の空の明るい時期は暗い天体の観測ができません。しかし、70cm反射望遠鏡と言う立派な機材を使わないのはもったいないので、今回は二重星や惑星の拡大撮影を試してみました。惑星や二重星などは非常に明るいので空が明るくても影響が少ないのです。
 まず写してみたのははくちょう座のアルビレオという二重星です。この星は肉眼で見ると明るく白い普通の星に見えますが、望遠鏡で眺めると、オレンジ色の明るい星と青色の少し暗い星が並んで見えて、大変美しいことで知られています。


はくちょう座のアルビレオの位置

 70cm反射望遠鏡に拡大撮影アダプターを付けて310倍で撮像してみました。すると青色とオレンジ色の星のイメージなのですが、色ずれが生じています。低空の星を撮像すると(目で見た場合も同じですが)青色と逆方向に赤色がずれる現象が起きます。これは大気による光の屈折が起きるのですが、色(波長)により屈折率が異なるために色がずれるのです。しかし、今回は天頂付近で撮影しているので、大気による屈折ではここまで色ずれは起きないだろうと考え、望遠鏡の光学系によるものかなと、星を中央に正確に導入したり、右上や左下にいろいろずらして写してみたのですが、どれも同じ方向に色がずれました。
 下の画像がその色ずれした画像です。緑の成分が右下に少しずれ、赤い成分はさらに多く右下にずれていることがわかります。


310倍で拡大撮影

 上の画像のままでは美しくないので、どうにかこれを補正する方法は無いものかとしばらく考えていたんですが、良い方法が見つかりました。以下にその方法を説明します。

 まず、ステライメージやPhotoshop、GIMPなどを使って、カラー画像を3色分解します(赤、緑、青の色別に画像を分離する)。ステライメージの場合は[合成]メニューから[RGB3色分解]で可能です。
 分解した画面は下の様になります。


三色分解した画面

 次に分解した画像を使ってRGB合成します。ステライメージだと[合成]メニューから[RGB合成]を選択します。この時に赤、緑、青の各画像の位置を調整することができます。下の画面の場合、青色の画像を基準にして、緑色の画像を少しだけ左上にずらしています。また赤色の画像はさらに大きく左上にずらしています(それぞれXYの値を見てください)。


三色を再合成中の画面

 下の画像が完成画像です。青色の星が綺麗に見られるように調整しましたので、オレンジ色の方は赤い成分が少し左上に寄ってしまいました。
 この方法は万能ではないし、学術用途に使えるものではありませんが、一般の人向けに星の紹介をするためには十分使えそうです。


色ずれを補正した画像
アルビレオ(はくちょう座)

 下は撮影風景です。観測撮像用のベントカセグレン焦点で拡大撮影したところ色ずれが発生したので、眼視観望装置で撮像するとどうなのか試している様子です。同じように色ずれしました。普通はここにカメラを取り付けることはしませんが、レデューサが入って無い分、周辺部まで美しく撮像できました。拡大撮影はここに取り付けた方が良いみたいです。
 これからは、月が明るい夜や雲が多い夜は、惑星や二重星等の拡大撮影をどんどんやっていきたいと思います。


眼視観望装置で拡大撮影を試しているところ



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